2009年7月25日土曜日

経済学A 第15回

 今回でこの講義も終わりです.最後は僕の趣味である「開発経済学」を採りあげました.

【授業の内容】
 開発経済学とは,途上国がどうすれば成長できるか,どうすれば貧困はなくなるのか,について取り組む,経済学の一分野です.普通の経済学も経済成長について研究するのですが,なぜわざわざ開発経済学が生まれたのかと言うと,日本やアメリカ,欧州などの先進国の経済と,アフリカや南アジアなどの途上国の経済は様々な面で異なっているため,先進国では有効な政策が途上国では通用しない恐れがあるからです.言うなれば,先進国は経済的に成長した大人であり,途上国は成長前の子供と言えるかもしれません.もしそうであるなら,大人と子供に同じ薬(政策)を使うわけにはいきません.大人にはちょうど良い薬も,子供には劇薬かもしれないからです.

 さて,では途上国と先進国はどう違うのでしょう.まずは様々なデータをみてもらいました.平均寿命,識字率,1人あたり所得やHIV感染率などです.最もHIVが猛威を振るっている国では,成人の感染率が約4割にあたるなど,我々からは想像もつかない状況です.またデータから見ると,世界の貧困はサハラ以南のアフリカと南アジアに集中していることがわかります.
 特に貧困が問題となっているのはサハラ以南のアフリカ(サブサハラ)ですが,昔から(相対的に)貧しかったのかと言うとそうでもないようです.60年前は東アジアよりはるかに豊かでした.しかし,サブサハラでは1人あたり所得が60年間伸び悩んでいるのに対して,東アジア諸国は特に80年代以降,急速に成長しました.

 ではなぜサブサハラは豊かになれないのでしょうか.授業ではその原因をいくつか紹介しました.途上国について調べていると,我々の常識では考えられない不運や失政などがたくさん見つかります.決してアフリカの人々が怠惰だから貧しいわけではなく,その彼らを取り巻く状況が悪すぎることに気づくはずです.
 こういった話に興味ある人は次の本が参考になります.たぶん大学の図書館にも入っています.
ロバート・ゲスト「アフリカ 苦悩する大陸」東洋経済

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