2009年7月11日土曜日

経済政策論 第13回

 今回から新たなトピック「環境」です.

【授業の内容】
 環境問題と一口に言っても,その範囲は非常に広いです.地球温暖化はもとより,大気・水質・土壌汚染,水不足,種の多様性など数多くの問題がありそうです.今回はそのうち,地球温暖化に焦点を絞ることにしました.

 地球温暖化の原因は何かについて,これまで様々な説がでてきたようですが,IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では,「地球は温暖化している」こと,そして「(それには)人類の活動が直接的に関与している」と結論づけられています.
 というわけで,人類の活動である温室効果ガスの排出により地球が温暖化している,ということを前提として解決策を考えることにします.

 環境問題は経済学的に捉えると,外部性の問題であると言って良いでしょう.外部性とは,経済主体AとBの取引により,第三者であるCになんらかの影響を及ぼすことです.その影響が悪い影響であれば外部不経済,あるいは負の外部性と呼ばれます.地球温暖化問題も,まさにこの外部不経済の問題です.ツバル共和国を例に取れば,この国は(主に)先進国がこの100年以上に渡って,石油由来のエネルギーを消費してきたこと,そして温室効果ガスを排出してきたことによる地球温暖化が引き起こす海面上昇により,国土の一部が海に沈んでしまいました.まさに,外部不経済の典型例です.
 ではこの外部性をどうすれば解決できるのでしょう.経済学からは,①ピグー税(課税,補助金),②内部化,③交渉,という3つの解決策が導き出されています.現在,イタリアで行われているサミットでは,まさに③交渉が行われているのでしょう.

 地球温暖化を止めるための手段は,大きく2つに分類できます.
【温室効果ガス排出量の削減】
 こちらは,排出量を減らすという手段もありますし,二酸化炭素を排出しないエネルギーを利用する手段(排出しない)もあるでしょう.
 前者の例としては,燃費の良い車を使う,省エネをする,という身近な方法もありますが,現在,スマートグリッドというシステムの研究も進んでいます.
 後者の例としては火力発電から,太陽光発電,風力発電などの再生可能エネルギーへと移行するという方法があります.根本的な解決のためにはこちらの方法の方が良いかもしれません.あるいは,両者を一緒に使うべきかもしれませんね.
【温室効果ガスを吸収(固定)する】
 排出量を減らすのではなく,空気中の二酸化炭素を減らすという考えもあります.二酸化炭素を地中深くに埋めて,温暖化させないという方法です.なかなか画期的ですが現実的なのでしょうか?オーストラリア政府はこの方法を推しているようです.

 いずれにせよ,地球温暖化は外部性を持っており,ある1人が努力して排出量を削減しても,他の人がそれ以上排出を増やしてしまえば意味がありません.そのため,1人1人の良心に訴えかけるよりも,規制や課税により,国レベル,地球レベルで排出量をコントロールする必要がありそうです.

 次回までの課題は次の3つです.
・スマートグリッドについて調べる
・ドイツで太陽光発電が急増した理由
・二酸化炭素を地中に固定する方法

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