2009年11月11日水曜日

経済学A 第7回

 今回と次回は株式と資産運用について説明します.皆さん,思っていたのと違ったかもしれませんね.

【授業の内容】
 僕は株のトレーダーではありませんし,ここは大学なので,株のコマゴマとした話や,具体的なテクニックではなく,骨格とも言うべき理論的な話をしました.今回説明した,現在割引価値,期待値とリスクという3つの概念は,株,そして資産運用について真っ当に学ぶのであれば,必要不可欠な知識だと思います.

 まず現在割引価値について説明しました.これは,現在の100万円と10年後の100万円の価値は異なる,というものでしたよね.なぜなら,わずかな利子であっても,100万円を預けておくと,年々金額は増えていきます.仮に1%の利子でも100万円を10年間預ければ110万4622円になります.つまり,現在の100万円は(銀行に預ければ)ほっといても110万円余りになるんですよね.ということは,現在の100万円は10年後の110万円とほぼ同じ価値を持っていることになりますし,言い換えれば10年後の110万円は現在の価値に直すと100万円になってしまうということです.これが現在割引価値という考え方で,未来のお金の現在の価値に直すときには,利子率を使って割り引く必要があるのです.
 なぜこの現在割引価値という考え方が必要となるのかは,来週のファンダメンタル分析についての説明を待ってください.

 続いて期待値ですが,これは数学で習ったことがあるかもしれません.期待値とは,(まだ起きてない事柄について)確率的な平均値を求めたものです.具体的に宝くじで言うと,1枚の宝くじは1等があたるかもしれませんが,ほとんどは外れます.では,1枚当たり,平均を考えると,どれぐらいの金額がもらえるのか,という考え方が期待値なのです.300円の宝くじの期待値は150円を少し下回るぐらい,と言われています.つまり宝くじは買えば買うほど(確率的には)損をするギャンブルなのです.そしてギャンブルの中でも,宝くじの期待値の低さは際立っています.平たく言うと,割りの悪いギャンブルです.
 さて,授業ではギャンブルと株はどこが違うのか,という話をしました.どちらも運が良ければ一攫千金,ただし運が悪ければ大損をする,という意味で「似たようなもんだ」と思っている人もいるかもしれませんが,それは間違いです.株による資産運用は,長期的に見ると期待値はプラスです.そこがギャンブルとの違いです.ギャンブルは,わずかな例外を除いて,期待値はマイナスです.つまりやればやるほど損をします(統計の話では「対数の法則」と言います).

 さて,残るはリスクの説明ですが,上記2つに比べてなじみがある言葉ですが,誤用が多い言葉でもあります.経済学やファイナンスで用いるリスクという用語は,(世間で使われているような)危険度という意味ではなく,結果のバラツキのことを指します.つまり吉と出るか凶と出るか,と結果が分かれることがリスクであって,確実にひどい目に遭うことがわかっている場合にはリスクはありません.また,株を買って,50%の確率で10万円儲けられ,残りの50%で30万円を儲けられるような場合でも,結果にバラツキがあるため,リスクはあります.つまり「損をしないこと=リスクなし」ではないのです.

 期待値とリスクですが,この2つのモノサシを使うと,様々な金融商品を比較することができます.例えば銀行預金はリスクが低いけど期待値も低い商品ですし,株は(次回説明するように)期待値はほどほどに高いですがリスクも割と高いです.

【お知らせ】
 今回は携帯を使ってアンケートを取りました.結果は今後の授業に活かしていきます.

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