2009年11月14日土曜日

経済学Ⅰ 第7回

 前回に引き続き金融政策です.今回は具体的な金融政策について説明しました.

【授業の内容】
 皆さんが手元にお金を置いておきたい(貨幣需要)と思うのはどんな時でしょうか.例えば,物を買う予定がある時かもしれません.人々は物を買う,言い換えれば取引を行う場合には貨幣を手元に置きたがるようです.では,どんな時に取引が活発に行われるのでしょう.それは景気が良く,所得も多い時でしょう.このことから,人々は所得が多いときは(取引を行うことが多いので)貨幣需要が高まります.このような貨幣需要を,取引需要と呼びます.
 また我々家計だけではなく,企業の貨幣需要についても考えてみましょう.企業が手元に多額のお金を必要とするのは,投資をする時であるでしょう.では,どんな時に企業は投資をするのか考えてみると,利子率が低い時でしょう.利子率はお金のレンタル代なので,利子率が低い,つまり安くお金を借りられるとき,企業は様々なプロジェクトに投資をすると考えられます.このような貨幣需要を投機的需要と呼んでいます.

 さて,人々の貨幣需要はわかりましたが,貨幣はいったいどうやって供給されるのでしょう?日銀がお札を印刷していることはわかりますが,どういったルートで我々の手元にお金が届くのでしょうか?
 前回確認したとおり,貨幣の供給量が増えると物価は上がりますが(インフレ),利子率が下がるために民間投資は増え,景気が回復します.これを金融緩和と呼びます.逆に貨幣の供給量が減ると物価の伸びは抑えられる,もしくは下がります(デフレ).そして利子率が上がるために民間投資が減少し,景気は落ち込むでしょう.これは金融引き締めと呼ばれます.日銀の主たる目的は物価の安定です.さらに景気の安定,金融システムの透明性を高めることも目的としています.
 日銀は貨幣の供給量を次の3つの方法で行います.
1.公定歩合(現在は,基準割引率および基準貸付利率)の操作
2.公開市場操作
3.支払準備率の操作
 順に説明しましょう.

1.
 (現在は日銀では使われていない言葉ですが公定歩合という言葉で説明します.)公定歩合とは,市中銀行が中央銀行に預け入れ,借り入れする際の利子率です.
 公定歩合が下がれば,市中銀行は有利な条件で借り入れができるので,貨幣供給量は増加します.対して,公定歩合が上がれば,市中銀行は借り入れしにくくなります.

2.公開市場操作
 公開市場操作とは,中央銀行が金融機関に国債などを売る(売りオペ),国債などを買い入れる(買いオペ)の総称です.
 売りオペをすれば,貨幣は市中銀行から中央銀行へと流れるために,貨幣供給量は下がります.買いオペはその反対です.

3.預金準備率
 預金準備率とは,市中銀行が顧客からお金を預かった場合,その一定割合を日銀に預けなければならないというものです.預金の規模,種類によりその割合は異なりますが,大体1%ぐらいです.
 この準備率が上がれば,当然ながら貨幣供給量は下がりますし,下がれば逆のことが起きます.

 実際の金融政策でもっともよく使われているのは公開市場操作(売りオペ・買いオペ)です.

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