2009年11月7日土曜日

経済学Ⅰ 第6回

 今回から金融について説明します.今回はその基礎として,「お金って何か?」,「金融政策って何か?」を説明しました.

 お金のことを,以後は貨幣と呼ぶことにします.我々は普段,「お金=現金」と考えがちですが,実際には現金は貨幣の供給量の1割にも満たない量しかありません.現在では貨幣の定義として,マネーストックという概念が用いられています.貨幣とは「これは貨幣だけど,これは貨幣ではない」ときっちり区別できるものではなく,「貨幣らしさ」をどこまで認めるかでその範囲が変わってくるあやふやなものです.どこまでを貨幣として認めるかを定義するモノとして,今日はM3というものを説明しました.
 まずマネタリーベースと呼ばれる現金通貨があり,現金通貨と普通預金を合わせたM1があります.これはほとんどの人が貨幣として納得できるものでしょう.現金が貨幣であるのは自明として,普通預金もすぐ引き出して貨幣として使えるので,貨幣に非常に近い性格を持っています.
 M3とはこれらの現金通貨,預金通貨に準通貨とCDを加えたものです.それらはM1ほどの「貨幣らしさ」はないけれど,「まぁ貨幣として認めても問題ないだろう」というものです.M3はM1より少し「貨幣らしさ」の基準を甘くしたものと言って良いでしょう.
 この貨幣の量(マネーストック)を調整することで,物価や景気の安定を図るものが金融政策であり,それを実施するプレイヤーは中央銀行(日本では日銀)です.

 後半は,なぜマネーストックを増減すると,景気あるいは物価に影響があるのかを簡単に説明しました.
 まず,貨幣供給量と物価の関係ですが,貨幣供給量が増える,つまり世の中にあるお金の量が増えるとどうなるのでしょう?わかりやすく極端な例として,日本に住んでいる全員に1人あたり100億円ぐらい配ることにしましょう.すると人々は一気に物を欲しがるようになるでしょうが,同時に急激に物不足になるでしょう(超過需要と呼びます).そのままの値段で販売していては売り切れになってしまいますね.つまり,もっと高い値段でも消費者は欲しがるでしょう.すると,お店側は値段をつり上げるのではないでしょうか.少々高くてもみんながお金をたくさん持っているので買うからです.このようにして,貨幣供給量の増加は物価を上げること(インフレ)になるでしょう.逆に貨幣供給量が減少すれば物価は下がると推察できますね.
 続いて,貨幣供給量と景気の関係ですが,貨幣供給量が増えることは,人々が豊富に貨幣を持っていることを意味しています.すると,お金を借りる時のレンタル代である,利子率は低くなるのではないでしょうか?なぜならお金が不足していて誰もが借りたがっているのであれば高い利子率でも借りたがる人もいるでしょうが,お金が豊富にある状況ではわざわざ高い利子率を払ってお金を借りる人は少ないからです.というわけで,貨幣供給量が増加すると利子率は下がるでしょう.では利子率が下がると何が起こるのでしょう?これは以前の回で説明しましたが,利子率が下がると民間投資が増えます.民間投資は需要の一部ですから,需要が増えることを意味しています.また需要の増加は,有効需要の原理から供給,つまりGDPを増やします.このようにして貨幣供給量の増加は間接的に景気を回復させることにつながります.

 次回は貨幣供給量を具体的にどうやって調節するかを説明します.

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