2009年11月4日水曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第7回

 今回は,寡占と独占的競争について説明したので,とりあえずこれにて独占市場は終わりです.

【授業の内容】
 寡占市場とは,売り手の数が少数である市場です.また仮定として,財が同質的である,つまりどの生産者も似たような財を生産していると考えます.
 例としてビール業界を挙げました.ビール業界では何が起きるのでしょう.売り手が少数である場合,ある企業が1社だけビールの価格を上げたとします.するとライバル企業たちは,その値上げに追随しません.なぜなら,現場の価格のままであれば,値上げした企業の顧客を奪うことができるからです.一方,値上げした企業に対する需要は急激に落ちるでしょう.そのため,互いに牽制し合い,値上げするのは難しくなります.
 逆に1社だけが値下げをした場合はどうでしょう.ライバル企業が追随せず,自社だけが値下げできれば,他の企業の顧客を奪って,売上げを大きく伸ばすことができそうです.しかし現実には,そう上手く行きません.なぜなら,値上げの時には追随しなかったライバルたちも,顧客を奪われまいと,値下げには俊敏に反応して追随するからです.結果として,最初に値下げした企業は,せっかく値下げしたのにライバル企業も追随してきたため,思ったように需要を伸ばすことはできませんでした.このため,値下げするメリットは小さそうです.
 このような状況では,企業は値下げ・値上げともに自ら率先して動きづらいです.その状況は,屈折需要曲線のグラフで表現することができました.またそのグラフから,限界費用が少しぐらい変化しても,生産量や価格に影響を及ぼさないことがわかりました.

 後半は独占的競争について説明しました.独占的競争の舞台は,売り手が多数で,新規参入・退出も自由という,企業にとっては儲けにくい状況です.このような状況では企業は財の差別化を図ることによって,一時的な独占状態を作り出して利潤を得ようとします.ただし,新規参入が可能なため,長期的にはライバル達も似た似たような財を真似して作るため,個別企業に対する需要は小さなものになってしまい,結果的に利潤はなくなってしまいます.言い換えれば,既存企業の利潤がゼロになってしまうまで新規参入は続くのです.
 僕はこの状況はファッション業界を上手く表現できているのではないかと思います.毎年,あるいは季節毎に,新たな流行を作り出す先行企業は一時的に独占利潤を得ることができますが,売れている・儲けているのがわかると,すぐにライバル達も同じような財を生産しようとします.
 またもっと長期的な視点で見ると,世界の家電業界も独占的競争に近いかもしれません.日本を始めとする先進国が高付加価値の財を開発し,一時的に独占状態を作り,高い利潤を得ますが,生産コストの安い中国や台湾などが同じような財を安く作るようになると財の価格は下がり,競争的な市場になってしまうため,あまり儲からなくなります.

 このように後期の内容というのは,現実の経済を反映したものが多いため,前期に比べると得るものが多いと思います.授業でも言いましたが,皆さんは来年の就職活動時に「有名な企業,知っている企業」を狙うのではなく,利潤の高い(結果として給与も高い)「独占状態により近い企業」を狙うべきだと思うんですけどね.

【中間試験について】
 次回は中間試験です.第6回の課題の解答をアップしておいたので参考にしてください.
http://wwt.bunri-u.ac.jp/mizunoue/filedl.html

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