2009年11月20日金曜日

経済学Ⅰ 第8回

 今回も金融の話です.みんな真剣に聴いていたから,きちんと理解できたのではないでしょうか.


【授業の内容】

 前回,貨幣供給量の具体的な調節方法として,3つ紹介しました.そのうち,支払準備率(預金準備率)というものが出てきました.今回は,この支払準備率を使って,信用創造の説明から始めました.

 第6回に貨幣の定義をした際に,現金は70兆円ぐらいしかないが,貨幣(M3)は約1000兆円もあるという話をしました.なぜ現金が70兆円しかないのに,その10倍以上のお金があるのでしょう?どうやって増えたのでしょう?それを理解するために,我々が銀行に預金をすると,そのお金がどこに行くのかを考えてみましょう.

 まずあなたが100万円を持っているとします.それを銀行に預けると,あなたの手元の現金はなくなりますが,代わりに預金が100万円増えます.つまりあなたの持っているお金は現金から預金に変わっただけで100万円のままです(当たり前ですね).しかし銀行にとっては,単純にお金(現金)が100万円増えました.これで貨幣は2倍に増えました(あなたの預金100万円と銀行が持っている現金100万円).ただし,厳密に言うと,銀行は預金の一部を日銀に預けなければならないので,手元の現金は100万円を少しだけ下回ります.ここでは10%引かれて90万円が残るとしましょう.

 次に,銀行は手元の現金90万円を持っていても仕方ないので,企業に貸し付けます.すると現金は企業の元へと移りますが,企業はそのお金を一旦銀行に預けます.するとそれを預かった銀行は,一部を除いてまたもや誰かに貸付けます.こうすることで,どんどん貨幣(現金+預金)が増え続けます.この過程で貨幣が増えることを信用創造と呼んでいます.

 さて,貨幣供給についてはこれでわかりましたが,貨幣の需要についても考えてみましょう.実は以前に貨幣の需要は,取引需要と投機的需要に分類できること,そして投機的需要は利子率が下がるほど増えることを確認しています.
 この貨幣の需要と供給によって利子率が決定されます.中央銀行は貨幣供給量を増加させることによって利子率を低下させることができます.利子率が低下すると企業は投資を増やすため,国内の財に対する需要が高まり,結果としてGDPは増加,つまり景気は回復します.ただし,貨幣供給量が増加することでインフレを起こしてしまう可能性もあります.
 では,現在のように景気が悪ければ(さらにデフレ傾向にあれば),貨幣供給量をどんどん増やして景気回復すれば良さそうに思えますが,流動性の罠という問題があります.これは,利子率がかなり低い水準では,貨幣供給量を増やしても利子率がそれ以上下がらないという現象のことでした.

 さて,これまで話してきた利子率ですが,実は1つではなく,様々な利子率が存在します.我々が銀行に預金するとき,銀行が企業に貸し付けるとき,日銀と市中銀行の間,そして市中銀行同士の取引などで大きく異なりますし,また期間の長さ,担保の有無などによっても異なってきます.
 この中でも,政策金利である無担保コール翌日物については覚えておいても良いですね.

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