2011年4月11日月曜日

開発経済学 第1回(4/8)

 今回から始まった開発経済学ですが,例年に比べ受講者数が多いので驚いています.時間割の関係もあるのかもしれませんね.

【授業の内容】
 開発経済学は専門科目であり,内容もつっこんだ話が多いので,関心がない人はなるべく受講しないことを勧めます.かなり時間がかかるレポートを複数回課します,と脅して振るいにかけたのですが,それでもかなりの人数が残って聴いていたので嬉しいです.

 今回このように脅した(×)覚悟を決めてもらった(◯)理由はもう1つあります.それはこれまでの授業形態を改め,今年からアクティブ・ラーニング(学生参加型授業)にするためです.そのため,開発経済学に関心のない学生には受講を控えてもらいたいと思っています.

 学生参加型授業とは,いわゆる講義とは違い,学生自らに考え,意見を発表してもらい,それを基に授業を進めるスタイルを採ります.もちろんいきなり「考えろ」と言っても難しいので,授業の前半は講義を行い基礎的な知識を伝え,後半に各自で,あるいは複数人で考え,意見を交換し,それをみんなに発表してもらいます.それらを僕が整理し,また新たな質問を投げかけます.このスタイルを採ることにより講義する時間が減ってしまうため,皆さんには事前に予習をしてもらうことでカバーするつもりです.3年生は授業数も減るので,ある程度時間の余裕があるでしょうしね.

 単位認定を含めた評価は,毎回の小レポートと3~4回のレポートが中心です.レポートを提出しない場合には単位を放棄したものとみなします.レポートの書き方についてはかなり厳しく指導します.特に盗用(いわゆるコピペ)は即,評価外です.

 さて,今回の授業の内容ですが,まず「開発経済学とは何か?」を説明しました.単に経済成長が目的であれば,皆さんはすでにマクロ経済学で学んだはずですね.マクロ経済学との違いは,開発経済学ではマクロ経済学では想定しないような状況の国がどうすれば成長するのかを考察します.トルストイは『アンナ・カレーニナ』の中で,「幸福な家庭はどれも似たものだが,不幸な家庭はそれぞれ(異なった)不幸を抱えている」という意味のことを語っています.これは国についても言えることではないでしょうか.つまり(幸福と思われる)先進国はどこも似た様なものだが,(不幸と思われる)貧困国はそれぞれその国ならではの問題点を抱えているということです.実際に1980年代には,貧困国に画一的な経済成長のための処方箋を与えたために,大きな副作用が出たことがあります.開発経済学ではその国独自の要因に目を向けることが必要です.例えばボツワナでは成人の1/3がHIVに感染しています.このような国では人々は長期的な視点から行動することは難しくなるのは当然でしょう.

 続いて,途上国の現状をデータで見ていきました.所得,栄養不足,教育,健康など,皆さんの予想通りでしたか.

 平均化されたデータではなく,個別の国を知ってもらうために,今回はジンバブエの現代史を紹介しました.約30年前に「世界で最も恵まれた独立」を果たした国は,現在どうなっているのでしょう.もはやかつての面影はありません.しかも状況が好転するような兆しも見えません.なぜジンバブエは理想的なスタートを成し遂げながら,その後つまずいたのでしょうか.今回僕が紹介したのはその原因の一端でしょう.

 授業の後半は「学生参加型授業」とはどういうものかを知ってもらうために,各自に「貧困とは何か?」について考えてもらいました.皆さんが発表してくれた意見をまとめると次のようになります.
・教育を受けられない状態
・食糧(栄養)不足
・低所得
・粗末な住居,住居がないこと
・モノがないこと
・失業
・医療を受けられない状態
・内戦
・治安が悪い状態
・衣料がないこと
・子供が働かされること
・孤立していること

 素晴らしいですね!僕が期待した以上の答えが出てきました.貧困というと我々はついつい物的貧困にとらわれがちなのですが,教育,失業,孤立など精神的充足と関連した意見が出てきました.特に孤立は素晴らしい.なぜ素晴らしいのかは次回の講義で説明することにしましょう.

 課題を配布しました.課題をこなすことで,さらに貧困についての理解・考えを深めましょう.次回も貧困についての話をします.

【課題】
 配布した小レポートの提出.
 締め切り:4/11(月)

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