2011年5月14日土曜日

開発経済学 第5回(5/13)

 最近は理論の話ばかりしてたので,今回はマイクロ・ファイナンスの話をしました.

【授業の内容】
 2006年にグラミン銀行とムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞したので,今となっては割と有名となったマイクロ・ファイナンスの話です.

 前回の小レポートで「貧困がなくならない原因は何か?」という問いをだしたところ,何人かの人は貧困の悪循環について記述していました.今回のマイクロ・ファイナンスは貧困の悪循環を打破するための小さなお金を貧しい人に貸す仕組みです.岡本他(1999)によれば,マイクロ・ファイナンスは「貧困層や低所得層を対象とする小規模な金融」と定義されています.
 マイクロ・ファイナンスを行う機関はたくさんありますが,今回はその中でも最も有名なグラミン銀行とその創設者ムハマド・ユヌス氏を取り上げました.ユヌス氏は母国バングラデシュに帰国し,母国に貧困にあえいでいる人が多いことに胸を痛め,どうすれば人々を豊かにできるか考え,近隣の村に住む人々を調査しました.その結果,人々が大金ではなく,ちょっとしたお金に困っているために豊かになれないでいる(貧困の悪循環に捕らわれている)ことを突き止めました.そのため,まずは僅かな自己資金を人々に貸し付けたところ,人々の生活は大きく変化しました.この試みは徐々に規模を拡大し,グラミン銀行の設立へとつながります.

 「貧しい人に小さなお金を貸す」.たったこれだけで人々の生活は目に見えて向上するのです.さて,ではなぜそれまでにこのような仕組みは存在しなかったのでしょうか?まずは皆さんにこの問題を考えてもらいました.前回同様,学籍番号でグループを作り,グループ毎に意見を集約してもらいました.
 すべてのグループに共通する回答は「きちんと返済すると思えないから」というものでしたね.まさにこの常識(?)こそがマイクロ・ファイナンスがなかなか生まれなかった理由でしょうね.しかし,この常識は誤解でした.きちんと返すインセンティブを意識させることで,返済率は高くなりました.

 グラミン銀行の成功した理由は他にもあり,単なる金貸しではなく,人々にお金を稼ぐ手段を教え,生活そのものを改善しようとしたことも理由の1つです.その例としてグラミンフォンや,ユニクロ=グラミンを紹介しました.

 さて,ここでマイクロ・ファイナンスの問題点を考えてもらいました.皆さんからは,(16の決意のために)稼いだお金が消費や教育に消えてしまって貯蓄に回らない,金利が高いのでなかなか元本を返済できずグラミン銀行に依存してしまう,連帯保証制度,国民所得が上がることによるインフレ,マイクロ・ファイナンスの普及により貧困層が減少するので(借り手が減るため)ビジネスとしての将来性がない,など非常に興味深い意見がありました.

 最後に皆さんにもできるマイクロ・ファイナンスとして,KIVAを紹介しました.いつの間にか日本語のページもできていたので,ますます身近になっています.

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