2011年5月15日日曜日

学生参加型授業についてのメモ その2:第2回

学生参加型授業についてのメモ その2:第2回

学生参加型授業についてのメモ その1の続きです.

 前回,「かなり厳しいレポートを課すので興味がなければ受講を取り消すように」ということを伝えた結果,当初登録していた学生の約2割が受講を取りやめ,残る約8割の42名が受講することになりました.
 今回は,前回の課題である小レポートを基に「貧困とは何か?」についての理解を深めました.

授業の概要
1.学生の意見の集約・グルーピング
2.レクチャー
3.グループ・ディスカッション①
4.レクチャー
5.グループ・ディスカッション②
6.レクチャー
7.グループ・ディスカッション③


1.学生の意見の集約・グルーピング
 まず,事前に学生が提出した課題の設問のうち,「貧困とは何か?」に記述されていた意見を,こちらでグルーピングしました.

 学生からの意見のうち,前回の授業で出た意見を黒字で,新たに出た意見を赤字で表しました.これにより,前回の内容を復習し,授業にスムースに集中することができたような気がします.

2.レクチャー
 「貧困とは何か?」について学生からは出なかった側面(ショックへの脆弱性)を指摘しました.ここでの結論として,「貧困は多面的なものである」ということを確認しました.

3.グループ・ディスカッション①「貧困を表す指標とは?」
 貧困が多面的なものであるということを踏まえた上で,「幅広い貧困をカバーできる指標を1つ選ぶなら何にするべきか?」について配布したプリントに記述させ,それを基に周りの学生と意見を集約させるように,そして約5分後にグループの意見を発表するように指示しました.ディスカッションに参加する学生としない学生に別れないよう,「前回発表していない人が発表してください」と伝えました.様々な意見を期待していたのではなく「結局,所得で測定することになるよね」という確認をしたかっただけなのであっさり終えました.実際,すべてのグループが所得やGDPなどを答えました.ここへの伏線として,第1回で「貧困状態にあるかどうかを所得で判断して良いか?」という質問をしておくと面白かったかも.

4.レクチャー
 GDPや所得を貧困の指標とすることが良いのか,ミュシャンのピストロジーの紹介や,実際に測定する時の問題点などを説明しました.さらに,貧困についての新たな視点として,センの潜在能力アプローチを紹介しました.

5.グループ・ディスカッション②「機能を示す指標とは?」
 ここで潜在能力アプローチにおける様々な「機能」を示す指標にはどのようなものがあるのか,話しあってもらいました.今回のディスカッションはすべてそれほど時間がかかるものではありません.10分弱話しあって,各グループに発表してもらいました.そこで発表された指標と,センが実際に挙げた機能のリストを比較しました.

6.グループ・ディスカッション③「どこからが貧困なのか?」
 便宜的に貧困を測る指標を所得とした上で,どこからが貧困なのかについて話し合ってもらいました.今度も10分程度は時間を掛けたかったのですが時間が足りなくなってしまいそうだったので,ちょっと早めに切り上げてしまいました.学生からの意見をまとめると,
・生活に必要最低限の金額
・他者との比較
に集約できました.

7.レクチャー
 こちらが期待した通りの意見が学生から出たので,Basic Human Needsや,絶対的貧困と相対的貧困の話にスムースにつなげることができました.
 最後に人間開発指数などの様々な指標を紹介して終りました.今回も課題として小レポートを提出するよう指示しました.

今回の結果
 「学生の満足度」と「議論の深さ」については,ほとんどの学生が積極的に議論に参加していましたが,グループ・ディスカッションが3つ,しかもそれぞれの時間が短かったため,学生にとっては不完全燃焼だったかもしれません.議論の深さについても,時間が長ければもっと良い議論になったはずです.
 反省点としては,昨年度と授業形式が違うにも関わらず講義内容をほぼ同じにしてしまったため,必然的に議論にかける時間が短くなってしまった点です.もっと思い切って講義内容を減らすべきでした.

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