2011年5月6日金曜日

開発経済学 第4回(5/6)

 今回は都市と農村でした.

【授業の内容】
 今回で4回目となり,皆さんのグループ・ディスカッションもややマンネリ化してきたかと思ったので,グループをこちらで決めました.普段と違うメンバーだと刺激もあるでしょうね.

 さて,まず日本の戦後から現在に至るまでの産業構造の変化を見てみました.戦後まもなくは第1次産業への従事者が最も多かったのですが,第2次産業,第3次産業への従事者が増加するのに対して第1次産業への従事者数・比率は一貫して減少し続けます.このように,経済発展の過程で,産業の中心が第1次産業から2次,3次へと推移していくことをペティ=クラークの法則と呼びます.
 また,産業の分類に関連して,労働集約的産業と資本集約的産業という分類についても紹介しておきました.

 ここで,高所得国,中所得国,低所得国をいくつかピックアップし,それらの実質GDP成長率の2005-2010年の平均値を紹介しました.高所得国になるに連れて成長率が低くなるように見えます.皆さんには,この原因を考えてもらいました.
 各グループの意見をまとめると次の3つになりました.
・人口の多い国は経済成長率が高いため(ここでは中国とインドのデータを紹介した).
・低所得国には成長の余地があるため.
・低所得国は援助を受けているため.
 さらに,「成長の余地とは何か?」と問いかけた所,新たに出てきたのは以下の意見です.
・教育:貧困国では十分な教育を受けていない子供が多いため
・空間:先進国ではすでに土地などが有効利用されているため
・分業:先進国では産業がすでに発展しており,国際的分業体制が出来上がっているため
・向上心:貧困国の人々はハングリー精神があるため
・模倣:貧困国には模倣すべきロールモデルが存在するため
 どれも説得力のある良い意見ですね.僕が予想しないものも出るのがグループ・ディスカッションの良いところですね.

 さて,今回は所得水準が高まるに従って成長率が下がる原因(「中所得国の罠」と言います)を,ルイスの2部門モデルにより説明しました.ルイスの2部門モデルは経済を伝統部門と近代部門に分けて考えます.議論のスタートは伝統部門に偽装失業が存在することからです.偽装失業とは開発経済学の用語で,途上国では一見して失業率が低いのですが,その内情を調べてみると,実際には仕事がないのに家業に従事する隠れた失業者が多いことがわかります.この余剰労働力を偽装失業と呼びます.
 この余剰労働力が存在するため,近代部門は安価に労働者を雇うことが可能です.近代部門は伝統部門からどんどん労働者を吸収して急激に成長します.しかしこの急成長は,余剰労働力の枯渇とともにストップします.余剰労働力が枯渇すると農村部で賃金が上がり,それは農作物価格を上昇させます.すると,都市の労働者にとって実質賃金が下がることになり,中には都市での生活ができなくなる人もでてきます.その人々は伝統部門へとUターンします.このように農村から都市への流入がストップすることで,経済成長率は低下します.
 この罠から抜け出すためには農業における技術革新が必要となりそうです.これに関連して,また後日,緑の革命について説明します.
 また,ハリス=トダロモデルについても説明しました.しかし時間がなかったのでかなり説明を省いてしまいました.気になる人は開発経済学の入門書を図書館で探してください.

 最後にレポートの書き方についてくわしく説明しました.まぁとにかく「レポート作成マニュアル」を一度は読んでくださいね.

0 件のコメント: