2011年5月14日土曜日

経済学A 第4回(5/10)

 前回に引き続き,経済学の歴史と同時にマクロ経済学について説明します.

【授業の内容】
 前回,世界大恐慌の際,古典派経済学が有効な打開策を提示できなかった,という所まで話しましたね.この時に古典派に代わって檜舞台に立ったのがケインズ派経済学です.ケインズ派経済学は古典派とは異なり,市場(の機能)を信頼していません.市場は完璧なものではなく,機能が上手く働かない場合(市場の失敗)がしばしばあると考えています.そのため,政府が積極的に市場に介入すべきだと考えています.さて,その介入の仕方を説明する前に,ケインズ経済学が需要と供給の関係をどのようにとらえていたかを確認しましょう.
 古典派はセイ法則を信じていました.つまり供給の大きさが需要を決めると考えていました.しかし,ケインズは逆に需要の大きさが供給の大きさを決めると唱えました.これは有効需要の原理と呼ばれます.この考えに立てば,供給(GDP)を大きくすること,つまり経済成長するためには需要を大きくしなければなりません.不況の場合は需要が小さすぎる(需要不足)のが原因だと考えます.ちなみに需要の内訳は,民間消費,民間投資,政府支出,純輸出(輸出-輸入)です.
 そのため,不景気に対する政府の介入方法は,民間に代わって政府がお金を使うこと,つまり政府支出をすることです.需要が足りないので政府がその不足分を支出します.これにより需要が増加し,有効需要の原理によりGDPが増加し,三面等価の原則により所得も同額だけ増加します.所得が増加すると,その何割かの量だけ民間消費が増加します.民間消費の増加は需要の増加を意味しているので,先程と同様にGDP,所得を増加させ,またも民間消費が増えることになります.このループを繰り返すことで,当初,政府が使ったお金以上にGDPが増えることになり,景気回復します.この流れは,政府支出の乗数効果と呼ばれます.
 実際に大恐慌の際にはアメリカでは民主党のルーズベルト大統領が中心となり,大規模な公共事業を始めとするニューディール政策を採りました.世界史?の授業で習ったのではないでしょうか.

 ケインズ派が主導する政府は国民の負担が大きい代わりに福祉も大きい大きな政府です.積極的に市場に介入するため,結果として慢性的に政府が赤字(財政赤字)となりがちです.1980年代には財政赤字の解消が大きな課題となったため,ケインズ派ではなく,市場の機能を重視する新古典派経済学が力を持つことになります.
 新"古典派"というだけあり,古典派と基本的な考え方は似ています.市場の機能,特に競争による成長を重視しています.そのため新古典派が採る政策は,民営化,規制緩和といった競争を促す政策が軸となります.福祉に関する考え方も,国民の負担が低い代わりに福祉水準が低い,いわゆる小さな政府となります.
 さて日本は小さな政府でしょうか大きな政府でしょうか.今後紹介する国民負担率で評価すると,日本は国際的には国民の負担が低い,小さな政府です.しかしその割には政府の使うお金(歳出)が大きいです.だから財政赤字が膨らんでいくのでしょうね.

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