2011年10月8日土曜日

経済学A 第3回(10/4)

 今回はマクロ経済学の入門編として,経済の仕組みの全体像を説明しました.
【授業の内容】
 今週と来週で経済の仕組みを大雑把に理解してもらいます.導入部分として,アメリカのオバマ大統領が掲げた「国民誰もが入れる健康保険」に反対する人がなぜいるのかを考えてもらいました.また,最近アメリカではかなり大規模なデモが起きています.このデモは何を訴えているのか,アメリカとはどんな国なのか,日本はどんな国なのかを学んでいきます.

 今回の話の前提条件として,経済学の目的は何かを説明しました.経済学は人々を幸せにすること,貧困を削減することを目的として誕生し,そのための目標値として,GDP成長率や,1人あたり所得などを用いることを説明しました.ポイントは「お金があることが幸せ」だと考えているのではなく,「幸せを測定するモノサシとして,(とりあえず)お金を使っている」点です.似たようなもんだ,と思うかもしれませんが,そこには大きな違いがあると,僕は考えています.
 というわけで,目標値であるGDPを説明しなければなりません.GDPとは,国民総生産のことですが,どれだけ商品を作ったかを示すものではなく,どれだけ付加価値を発生させたか,を示すものです.簡単な数値例で計算しましたね.
 ここから,経済学(と経済)の歴史について説明しました.今回は経済学の誕生として,古典派の人たちが何を考えていたかを主に説明しました.古典派の人たちの主張を簡単にまとめると,「市場の働きを信頼しており,政府が市場に介入すると,そのメカニズムが乱されてしまう.そのため,政府は何もしない方が良い」というものでした.民間に任せておいても,まるで神の見えざる手が存在するかのように,うまく物事を治まるというものです.政府は最低限だけの役割(警察,国防,消防など)を行い,後は民間に任せるというものです.これはレッセ・フェールと呼ばれます.

 古典派のもう1つの特徴として,セイ法則があります.これは,供給の大きさが需要の大きさを決めるというものです.ある経済を,生産(供給),支出(需要),所得の3つの側面から測っても大きさが同じであると言うことを三面等価の原則と言いますが,古典派はこのうちの生産を重視します.なぜなら生産が大きければ需要は勝手についてくると考えたからです.
 このような古典派経済学は,1920年代後半に起きた世界大恐慌に際して無力でした.大不況であることがわかっても,有効な解決策がないからです.そこで,このような非常時に有効な薬をケインズたちが提示します.ということで,次回はケインズの登場から話します.

 この流れとは接点があまりないのですが,少しだけマルクス経済学の話もしました.今となってはすでに歴史の遺物という感じですが,前世紀,皆さんが生まれる少し前までは一定の影響力のある思想?システム?でした.我々が普段当たり前だと思っている経済システムは市場経済と呼ばれます.財(モノやサービスの総称)の値段や取引される量は市場で決まるからです.対するマルクス経済学の影響下にある国の経済は計画経済です.計画経済では,供給量は市場によって決まるのではなく,政府の計画で決定します.みんなにとって必要と思われる量だけが生産され,平等に分配されます.平等という意味では理想的な社会でありますが,計画経済の最大の問題点はインセンティブが活かせないことでしょう.独創的な発明,効率化,消費者のニーズをつかむこと,これらがあまりメリットをもたらさない仕組みでは,人間はあまり努力しないものです.ほぼすべての財の生産は国や地方の公共団体がやるより,民間がやる方が効率的です.郵便局の窓口も民営化すると決まってから随分愛想が良くなったと思いませんか?

 今回は課題を配布しました.主要国の人口やGDPを調べてきてもらいます.次の授業で回収しますね.

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