2007年12月3日月曜日

経済学Ⅰ 第11回

 テストを1週はさんで,引き続き貿易でした.

【授業の内容】
 今日は互いに得意な産業を持つ両国による貿易と,得意な産業のない国と苦手な産業のない国の貿易が,それぞれ何をもたらすのかを説明しました.

 まずは漁師と農民を例として,互いに得意(絶対優位)なものがある場合に,ロビンソンクルーソーのように自給自足をするのか,それとも互いに得意なものを作り交換するのとどちらを選ぶべきか説明しました.
 このような場合には,自給自足するよりも,互いに絶対優位を持つもの(漁師は魚釣り,農民は米作り)に専念して(特化),作ったものを交換することで両者とも幸せになれることを数値例で確認しました.

 上記の例では,交換(貿易)するとお互いに幸せになれるというのは,なんとなく予想できましたね.では次に,テレビと自動車の生産について絶対優位を持つ国と,どちらも絶対劣位である国の場合ではどうでしょうか?わざわざ自国と比べ絶対劣位にある国と貿易する意味はあるのでしょうか?また絶対劣位にある国は,優位な国と貿易してしまうと負けて損失を出してしまいそうな気がします.
 しかし,数値例でも確認した通り,テレビと自動車に絶対優位にある国は,どちらも得意だがあえて言えばより得意な(比較優位)テレビの生産に特化し,逆に絶対劣位にある国は,どちらも苦手だがテレビに比べればまだマシな(比較優位)自動車の生産に特化します.その上で貿易をすることで両国とも幸せになりました.
 比較優位は直感的な印象と,その中身が違うので驚くのではないでしょうか?僕は大学生の時に比較優位を学んで驚いたのを今でも覚えています.

 さて,これまでの例から自由な貿易は両国を幸せにすることがわかりました.しかし現実には自由な貿易が行われているとは言えません.我々が購入する様々なもの(あるいはその原材料)には関税がかけられています.
 なぜ日本政府は日本全体が幸せになれる自由な貿易をわざわざ妨げているのでしょうか?それは先ほどの話は数値例に過ぎませんでしたが,実際にはテレビに特化して自動車の生産を減らすことは,自動車産業が規模を縮小することであり,そこで働く労働者が失業することを意味しています.失業すれば当然その家族にも影響が出ることになりますね.
 そのため,関税により保護されている業界のことだけを考えれば,自由な貿易というのは決して歓迎されるものではないでしょう.当然ながら強硬に反対するはずです.
 しかし,関税により一部の産業を保護することは,日本全体のことを考えればマイナスです.なぜなら他の国と比べ効率が悪い産業に従事する労働者を増やすことになるからです.長期的な視点に立てば,関税を撤廃することで労働者が非効率的な産業から効率的な産業へと移動することになるため,労働者としてもより高い賃金を得ることになるかもしれません.

 自由な貿易は一時的には波風を起こすことになるでしょうが,長い目で見れば一国全体の生産の効率性を高めるものです.それに自由な貿易は世界的な流れであり,日本だけがその流れを押しとどめることは不可能です.
 自由な貿易を押し進める流れは,各国政府間で結ばれる自由貿易協定(FTA)の数に現れています.現在日本はメキシコ,シンガポール,マレーシアなど8ヶ国とFTAを発行あるいは署名済みです.さらにASEAN全体やインド,韓国などとも交渉中です.

お知らせ
 授業でも伝えた通り,中間テストの再テストを行います.ただし,テストを受けるのは15点未満だった人だけです.新年1回目の授業(1月21日?)の後半を使ってテストをします.そのテストで7~8割を取れれば中間テストの成績を15点に修正します.
 15点未満の人にはポータルサイトを通じて個人呼び出しがかかっているはずです.きちんと確認しましょう.

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