2007年12月11日火曜日

経済学A 第13回

 今日は少子化問題を取りあげました.

【授業の内容】
 なにかとニュースで耳にする少子化問題ですが,果たして少子化のどこが悪いのでしょうか?前々回の年金,前回の財政と合わせて考えてみました.

 まず「少子化とは?」から始めました.少子化の目安としてよく用いられるのは合計特殊出生率(TFR)です.TFRは1人の女性が生涯に何人の子供を産むか,と説明されることが多いです.厳密には違うのですが,イメージとしてはだいたいそんなところです.日本の昨年のTFRは1.32です.人口を維持するためには2.08が必要とされていますので,明らかに子供が足りません.おそらく今年ぐらいを頂点として日本の人口は長期的に減少していくことでしょう.

 次に,少子化のデメリットですが,なんといっても人口バランスが歪むことにより社会保障制度の存続が危うくなるというのが大きな問題です.社会保障の1つとして年金制度を例に挙げれば,前々回説明したように日本の年金制度は実質的に賦課方式で成り立っています.そのため高齢者の数に比べ,それを支える労働者の人口があまりに少なくなると制度自体が成り立たない恐れがあります.
 さらに,日本の場合は巨額の国債残高という課題もあります.これは簡単に言えば借金ですが,日本の将来人口が多ければ1人あたりの返済額も少なくすみますが,少子化になれば,この莫大な借金を背負う人数も少なくなり,1人1人が厳しい思いをすることになるでしょう.
 この他,労働力人口そのものが減少することにより,GDPの減少,引いては国際的な発言力の低下なども予想されます.

 逆に少子化の良い点は,1人あたり資本の増加,環境負荷の軽減,人口過密の緩和などが挙げられます.つまり日本全体の経済規模は小さくなっても,1人あたりで言えば逆に豊かになる可能性もないわけではありません.
 豊かな小国の実例として,ルクセンブルクやスイスがあります.

 後半は少子化の原因と対策を説明しました.日本の少子化というのは,実は夫婦が子供を産まないことではなく,男女が結婚しないことから起きています.生涯未婚率や平均初婚率でも確認した通りです.なぜ結婚しないのかの説明はいろいろできますが,1つには女性の高学歴化と,それに伴い女性が自立した生活ができるようになったことが挙げられるでしょう.また,以前に比べ親が裕福なため,わざわざ親との同居による豊かな生活を捨ててまで,(両親と比べると)収入の低い男性と生活を選ぶことに抵抗があるのかもしれません.
 非婚化・晩婚化への国としての対策というのは,なかなか困難です.なぜなら結婚というのは完全に個人的な問題なので,国が結婚せよとは命令できませんからね.しかし,夫婦に対する所得減税などをすることで,若い人たちに「独身は損かもしれないな…?」と思わせることは有効かもしれません.

 最後に他国の少子化対策を概説しました.フランスは少子化対策により少子化を脱した成功例です.フランスでは24種類もの手厚い子供手当を用意することで,10年間の間にTFRを1.6から1.89にまで急激に増加させました.
 その他の手段として,アメリカのように出生力の高い移民を大量に受け入れるという方法もありますが,日本では政治的な理由により現実的ではないでしょうね.

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