2008年5月8日木曜日

開発経済学 第5回

 今日は輸入代替と輸出指向を比較しつつ,工業化と貿易について説明しました.

【授業の内容】
 現在,日本は遅ればせながら,積極的にFTA(日本政府はEPAという言葉を使っていますが)を勧めています.どうして各国はFTAを行うのでしょうか?また,逆にこれまでどうして自由な貿易をしていなかったのでしょう?

 今日はアジア各国の20世紀の歴史をひもときながら,輸入代替工業化政策を採った国と輸出指向工業化政策を採った国のその後を比較しました.

 まず前提条件として戦後のアジア諸国の状況から確認しました.アジアの多くの国は西洋列強,また日本の植民地化を経験したため,多くの国々がモノカルチャー経済からスタートしました.マレーシアのゴムや錫(すず),インドネシアのコーヒーやサトウキビなどがその例です.モノカルチャー経済は当然ながらリスクに脆いという性格を持ちます.また授業では説明できませんでしたが,交易条件が徐々に悪化するというデメリットも孕んでいます(これについては次週).

 この時点で考えられる戦略として,1次産品の輸出を通じての工業化がありますが,これは先進国の保護主義により挫折します.その時点での先進国は同様の戦略で発展しましたが,その時には先を行く先進国がいませんでしたしね.
 次の戦略として,保護主義的な工業化(輸入代替工業化政策)と自由貿易を通じた工業化(輸出指向工業化政策)がありました.後者を選んだのは韓国,シンガポール,台湾,香港といった比較的小さな国々です.自国の市場が小さいが為に輸入代替工業化を選択できなかったという理由もあるでしょう.残るアジアの多くの国々は前者を選びました.

 多くの国が輸入代替工業化政策を選んだのには理由があります.まだヨチヨチ歩きの産業を守り育てるためには,外国からの安く,性能の良い製品との競争から守ってやる必要があると考えたからです.
 しかし,この政策にはデメリットも存在します.まず,国内で商品を売ろうにも国内市場は小さく,十分な購買力がありません.そのため規模の経済が働かず,なかなか競争力が育ちません.また,自国通貨安に誘導したため,当然輸出条件は悪化し,慢性的な貿易収支の悪化を引き起こしました.
 こうして輸入代替工業化政策を選んだ多くの国が伸び悩む中,輸出指向工業化政策を選んだ国々は急速に発展していきます.

 輸出指向工業化政策,つまり自由な貿易のメリットとは何でしょう?講義では以下の3つを挙げました.
・比較生産費説
・学習効果(技術の伝播)
・競争促進

 最後に技術の伝播を説明するものとして,ヴァーノンのプロダクト・(ライフ)サイクル論を紹介しました.

 来週は農業を取りあげます.

レポートの提出
 第1回のレポートの提出期限は5/15,つまり来週の木曜日までです.

【お知らせ】
 以前から予告していた外部講師を招いての講演会ですが,ジンバブエで建築に携わっていた方になりそうです.

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