2008年5月16日金曜日

開発経済学 第6回

 今回は農業を取りあげました.

【授業の内容】
 途上国では多くの人が農村に住んでおり,また貧困層の多くが農村部に住んでいます.
 農業の特徴としては以下が挙げられます.
・気象リスクの存在
・季節性(季節的失業)
・生産資源の移動が不可能
・土地が有限

 授業では農業をマクロ,ミクロの両側面から考察しました.
 マクロ的な側面として,ヌルクセらが唱えた輸出ペシミズム論を紹介しました.これは一次産品の輸出に依存した形の経済開発は困難であるということです.その説明として,プレビッシュ=シンガー命題を紹介しました.

 続いてミクロ的な側面として,農業生産と人口の関係について説明しました.農業は「土地が有限」であるという特徴を持つため,人口増加と共に1人あたりの収穫量が逓減してしまいます.つまり,他の条件が一定であれば,人口成長率の高い途上国で農業を主な産業として頼ってしまうと,徐々に貧しくならざるを得ないのです.
 農村が貧困するためには次の3つの解決策があります.
・出生率の低下
・余剰労働力の都市への流出
・収穫効率の改善
 このうち,出生率の低下については次回「人口経済学と教育」で取りあげます.次の余剰労働力については第4回の「二重構造」で取りあげました.今回は最後の収穫効率の改善例として,緑の革命について説明しました.

 緑の革命とは,品種改良による高収量品種の開発の他,灌漑設備,化学肥料の普及による爆発的な農業生産の増収のことです.東南アジアでは1960年代に,南アジアではそれから20年ほど遅れて普及しました.
 授業では説明しませんでしたが,緑の革命により収穫量が増加したのは疑いようがありませんが,その弊害がなかったわけではありません.

 最後に農業の持つリスクがもたらすものとして,貧困の一側面であるショックに対する脆弱性について述べました.我々の生活と違い,途上国ではリスクに対する公的なセーフネットというのは期待できません.失業保険もなければ,障害保険も年金もありません.もちろん,天候不順により収穫量が激減しても天候保険などありません.頼れるのは所属する共同体や親族ぐらいでしょう.
 どこかからお金を借りてくることができれば良いのですが・・・,というわけで近いうちに近年注目されるマイクロファイナンスについて講義します.

【レポートについて】
 まだほとんど読んでいませんが,噂によると力作もある一方,ひどいのもあるとか….直前じゃなくてもう少し早めにやりなさい!そして出席しろ!

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