2008年11月19日水曜日

経済学A 第9回

 前回の為替と関連して,今回は貿易とグローバリゼーションについて講義しました.といっても,貿易で時間を取ってしまったので,グローバリゼーションについては,次週に持ち越しです.

【授業の内容】
 日本の経済は世界の経済と密接に絡みついており,切り離して考えることは不可能です.以前にやった株を例にとっても,日経平均の値動きは前日のニューヨークダウ,あるいは為替レートの影響を強く受けます.
 さて,このようなグローバル化した経済は今後どのように変化していくのでしょう?またそれは皆さんの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?

 まずグローバル化と反グローバル運動について少し触れました.我々経済学者は「グローバル化(特に自由な貿易の促進)は良いものだ,なぜ反対するのだろう…?」と悩んでしまいます.そもそもグローバル化自体はどんなに反対してもその流れは止められないのです.
 色々調べてみると,反グローバルと言っても,スティグリッツ氏のように「グローバル化自体に反対ではないが,現在のようなグローバル化に反対」という人もいれば,グローバル化すること自体に拒否反応を示す人まで様々です.「先進国の一握りの企業が,途上国の子供たちを劣悪な状況で働かせることで儲けている,つまり子供たちを搾取している」というのも反グローバル運動でよく聞く話です(その是非はともかく).
 ちなみに著名な言語学者であるチョムスキー氏は「半グローバルという言葉自体が,レッテルである」という指摘をしています(小泉政権下の抵抗勢力という言葉のようですね).

 さて,今回は経済学におけるより良い状態をまず定義し(パレート改善),その後,貿易により国々が幸せになれるかどうかを数値例で確認しました.

 より良い変化の目安であるパレート改善とは,「他の人を不幸せにすることなく,ある人が幸せになるような変化のこと」です.このような変化であればとりあえず良い変化だとして,今回は話をしました.もちろん両者とも幸せになれば言うことなしですよね.

 では実際に単純化した例により,貿易を行うと幸せになれるかを確認しました.まずは,両者ともそれぞれ相手より得意な生産物があるケース(絶対優位)です.この場合,多くの人が予測するように,貿易することで両者とも幸せになりました.
 続いて,相手国よりすべてにおいて秀でている国と,すべてにおいて劣っている国の2国が貿易することで何が起こるかを確認しました.微妙な変化ではありましたが,予想に反して(?),両国とも幸せに,つまりパレート改善したようです.

 このように貿易は国レベルで見ると,両国とも豊かになれるという素晴らしいものです.しかし,現実の世界には自由な貿易に反対する人は多く存在します.なぜ彼らは自由貿易に反対するのでしょう?
 それは相手国より優位にある(比較優位)生産物の生産者は規模を拡大できますが,劣位にある生産物の生産者は自由な貿易により,生産規模が減少します.つまり解雇されたり,倒産してしまうのです.

 さて,皆さんと直接関係なさそうなこの話,皆さんの将来を占う上でも多くの示唆に富んでいます.グローバル化する経済で我々の生活はどうなるのか,次回考えましょう.

【参考文献】
 今回の授業で紹介した本は以下の通りです.多くは図書館にあります.
トーマス・フリードマン(2006)「フラット化する世界㊤㊦」日本経済新聞社★とくにオススメ!★
梅田望夫(2006)「ウェブ進化論」ちくま新書
ピエトラ・リボリ(2006)「あなたのTシャツはどこから来たのか?」東洋経済新報社
ドン・タプスコット,アンソニー・ウィリアムズ(2007)「ウィキノミクス」日経BP社

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