2008年11月14日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第9回

 今回は外部性について説明しました.

【授業の内容】
 外部性とはある経済主体による経済活動が,それとは無関係の第3者に与えるなんらかの影響のことです.このような市場の失敗が起こると,最適な資源配分が実現されません.そのため何らかの対策が必要になります.外部性の典型例としては公害や環境破壊が存在します.例えば,先進国がこれまでに100年以上に渡って消費してきた石油燃料のせいで地球温暖化,そして海面の上昇が進んだとすると(この説が本当かどうかは僕の専門外なのでわかりません.あくまで例です),海面上昇により国土が小さくなってしまい,大きな被害を受けているツバル共和国のような国にとってはまさにとばっちりです.これが外部性です.

 さて,外部性は第3者に与える影響が良い影響か,悪い影響かで区別することができます.前者は外部経済,後者は外部不経済と呼ばれます.
 また第3者に与える影響が市場を通じたものか,そうでないのか,によって金銭的外部性技術外部性,というように区別されることもあります.

 授業では採り上げませんでしたが,ここでは外部性の例として教育を考えてみます.教育も外部性を持っています.例えば皆さんが受けている大学教育について考えてみると,大学教育は学生(というより学生の保護者?)と大学法人との間の取引です.保護者は学費を支払い,大学は教育サービスを提供します.
 さて保護者(と学生)と大学は取引の関係者なので内部ですが,この取引は外部にも影響を与えています.例えば総合政策学部の卒業生はある程度の法律や経済などの知識を持っているでしょうから,卒業生を雇う企業にとってはそれらの知識を教える必要がありません.企業にとっては人材育成コストがかからないので,大学教育は企業に外部経済を与えていると捉えることができます.
 余談ですが,大学などの高等教育が上記のような効果,つまり労働者としての価値を高めているかどうかについては経済学者の中でもコンセンサスはありません.「高等教育が人的資本(労働者としての能力)を高めるんだ!」という人もいますし,「企業は学歴を能力のシグナルとして使っているだけで,大学で学ぶことに期待などしていないよ」という人もいます.どっちでしょうね?大学関係者としては前者であると期待したいところですが….

 さて,このような教育は学生自身にとって有益であるだけでなく(大卒は給料が高い),企業にとっても有益なので,社会全体から見るとより有益です.そのため,政府がお金を出して教育費を安くして,より多くの人が大学で教育を受けられるようにすることが合理的です.また実際にそれは実現されています.旧国公立大学(現在は独立行政法人ですが)には国からの援助があるので学費は安く設定されていますし,私立大学にも私学助成金という形で(旧国公立大ほどではないにしても)援助されているので,実際にかかっているコストよりも学費は低いはずです.
 まとめると,外部経済がある場合は,社会的収益率の方が私的収益率よりも高いので,社会的に見て最適な水準よりも少なく(過小に)生産されます.そのため政府などが援助する必要があります.
 また逆に外部不経済がある場合は,社会的限界費用の方が私的収益率よりも高いので,社会的に見て最適な水準よりも多く(過剰に)生産されます.そのため政府によるなんらかの規制が必要です.

 さてこのような外部性への対処ですが,3つの方法があります.
1.課税・補助金(ピグー税)
 まず課税や補助金により最適な生産量を実現するという方法があります.最近導入が検討される炭素税もこれにあたります.またタバコ税もそうなのかもしれませんね.
2.内部化
 外部に効果が漏れるのが問題なら,漏らさないようにしようというのが,この内部化です.授業では駅ビルの建設によって,駅の集客能力を外に漏らさないようにすることを説明しました.
3.交渉
 内部と外部で交渉することでも,最適な資源配分が達成できることもあります.ただしその条件は「取引コストがほとんどかからないこと」です.これはコースの定理と呼ばれています.これについてはテキストに詳しい説明もあります.

 最後に消費における外部性として,スノッブ効果バンドワゴン効果を説明しました.

0 件のコメント: