2008年11月27日木曜日

経済学Ⅰ 第11回

 今回はグローバリゼーションについて講義しました.

【授業の内容】
 グローバリゼーションは,僕個人としては非常に興味深いし,皆さんの生活にとっても将来的に非常に重要なテーマであると思っているのですが,興味深く感じる人と,まったく興味が持てない人にはっきり分かれるようです.

 授業の冒頭は,前回の続きを少し話しました.リカードの比較生産費説における絶対優位,あるいは比較優位はどのようにして生まれるのかを考察しました.
 また自由貿易の形態についていくつか説明しました.現在の日本はFTAと呼ばれる2国間あるいは他国間の自由貿易協定を進めています.ちなみに日本政府はFTAよりEPA(経済連携協定)という言葉の方がお好きなようです.EPAの方がより包括的ではあるようですが,似たようなもんだと思って良いでしょう.
 さらに国と国の経済が近くなれば,EUやメルコスールのような共通市場(ヒト,モノ,カネの移動が自由)に発展するでしょうし,さらに経済政策まで共通するような経済同盟になるかもしれません.

 また,前回の補足として,日本はなぜ固定相場制ではなく変動相場制を選んでいるのかを説明しました.結論だけ言えば,独自の金融政策を放棄したくないからです.

 さて,グローバリゼーションですが,経済のグローバル化は別に最近始まった事ではありません.大航海時代だってグローバル化です.インドとヨーロッパの国が結びついたわけですしね.また日本で言えばペリー来航もグローバル化のきっかけと言えるかもしれません.あるいは自動車,鉄道,飛行機の発明も国と国の距離を縮めて来ました.これらのグローバル化と近年の(2000年以降の)グローバル化はどこが違うのでしょう.
 それは2000年以前のグローバル化はモノとヒトのグローバル化であったのに対して,近年のそれは,サービスのグローバル化という質的な違いがあります.またこれまでのグローバル化によって少しずつ縮められてきた距離が,一気に,劇的に縮められたという量的な違いでもあるでしょう.
 モノのグローバル化によって日本では,モノ作りの拠点が中国などの賃金が安い国に移転してしまうと言う産業の空洞化を経験しました.私たちはこれから,サービス産業の空洞化を経験する可能性があります(というより,まず間違いないでしょう).
 もちろんすべてのサービス産業が空洞化するのではなく,海外でも供給できるサービスだけですけどね.例えば美容院やタクシーといった仕事は,いくらネットが発展してもその場にいなければできない仕事です.

 最後に単純化した日本と中国の数値例を使って,完全なグローバル化が起きれば,日本と中国の頭脳労働者と肉体労働者の賃金にどのような変化が起きるかを考えました.今日の話は本当に重要です(と僕は思っている).皆さんも漫然と職業を選ぶのではなく,その職業の10年,20年後も見据えて選びましょう.

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