2008年11月27日木曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第11回

 今回はリスクと不確実性についてです.メインは来週で,今回は基礎知識です.

【授業の内容】
 今回は,期待値,リスク,不確実性についてきっちりと理解することが目的でした.

 期待値については経済数学入門ですでに説明済みなので,説明は省略しました.私たちは未来に何が起こるかわかりません.しかし,予測をすることは可能です(当たるかどうかは別として).例えばサイコロを1回振ると,1~6のいずれかの目が出ますが,何度も振ればその平均は3.5に近づくであろうと予測できます.このように,未来に起こる出来事の結果と,それが起こる確率を掛け合わせたものが期待値です.確率的な予測値と言えそうです.
 世間で行われているギャンブルには共通点があります.すべてこの期待値がマイナスである点です.ギャンブルというのは胴元が儲かるようなシステムになっているので当たり前です.しかし実際には多くの人が宝くじを買っています.
 人間は期待値だけで選択をしているわけではないことの説明に,サンクトベテルスベルグのパラドックスの説明をしました.このゲームの期待値は無限大になりますが,まともな人なら誰もこのゲームに挑戦したいとは思わないでしょう.
 なお,近年の実験経済学,心理経済学などと呼ばれる分野の研究から,実際の確率と人々が認識する確率との間に乖離があることがわかってきました.宝くじのように非常に確率が低いものは実際よりも高く,逆に確率が高いものについては実際よりも低く認識してしまうようです.つまり宝くじは確率で考えれば当たるとは思えないけど,我々は「ひょっとしたら当たるんじゃないか?」と甘く考えてしまうのです.なんとなく思い当た人も多いんじゃないでしょうか.

 続いてリスクですが,これも経済数学入門でリスクとは危険度ではなく,分散の大きさ,つまり結果のばらつきの大きさであることを説明しています.
 そのため,リスクへの対処方法について説明しました.1つは分散投資であり,もう1つは保険です.前者については,株を例に取り,簡単なリスクヘッジの方法を説明しました.
 後者については自動車の損害保険を例に考えました.なぜ保険会社が儲かるのかと言うと,事故が起こる確率とその時の保険金の支払額から期待値を計算して,それを上回る保険料を課しているからです.ただし,前回説明したように保険には,情報の非対称性があり,逆選択,あるいはモラルハザードといった問題が発生する恐れがあります.保険各社はこの情報の非対称性を解消すべく,様々な取り組みをしています.

 ここで気分転換に,確率についてのお遊びとして,モンティーホール問題を紹介しました.事前の確率と,情報が公開された後の確率が異なることを説明しました.
 この問題の詳しい説明は,ネットで検索するとたくさん出てくると思います.

 最後に不確実性を説明しました.リスクとの違いは,リスクという言葉を用いるときは様々な結果の起きる確率が分かっている場合であるのに対し,不確実性は,何がどのような確率で起きるのかすらわからない時に用います.人間関係などは不確実性ですが,宝くじはリスクです.
 多くの人間はリスクを嫌いますが,(こちらも近年の研究より)リスクよりも不確実性を嫌うことも分かってきました.授業ではその一例を紹介しました.

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