2009年5月12日火曜日

経済学A 第5回

 今日は名目値と実質値の違いを説明しました.

【授業の内容】
 最近,またデフレのニュースを耳にするようになりました.昨年までは原油高騰によるインフレが懸念されていましたね.インフレとは持続的な物価上昇,デフレとは同じく物価下落のことです.
 今日の名目値と実質値の違いをテーマとして取りあげたのは,このような物価の変動に惑わされない目を持つためです.

 まず,物価とは何かを説明しました.「景気とは何か?」の時と同様に,「これが物価だ!」というものはなく,様々な指標を使って物価を測定します.今回はそのうち代表的な指標である消費者物価指数(CPI)を説明しました.
 CPIは平均的な家庭が生活していく上でどれだけお金がかかるのかに注目した指標です.総務省統計局による詳しい説明はこちら.http://www.stat.go.jp/data/cpi/index.htm
 紙オムツからPTAの会費まで,実に様々な支出(585品目)が調べられています.
http://www.stat.go.jp/data/cpi/zuhyou/hinmokuc.xls(品目一覧,Excel)

 さて,この物価ですが,時間によって,地域によって大きな差があります.実は最近,マクドナルドでも地域別で価格に差をつけるようになりました.知っていましたか?同じ日本でもビッグマックセットの値段は560~640円と差があります.そのため,最近はマクドナルドのウェブサイトを見ても値段が載っていません(前は載っていたんですが…).
 物価はどうして変動するのでしょうか?僕が子どもの頃(20数年前)は週刊少年ジャンプが170円,カルビーのポテトチップスが100円ぐらいだったような記憶があります.調べてみると,今はジャンプも240円ぐらいするんですね.ポテトも150円ぐらいではないでしょうか.意外と値上がりしてないような気もしますね.逆に電化製品の多くは値下がりしています.僕の父親が1980年代に初めてパソコンを買ってきた時は50万円ぐらいしたそうですが,今はそれとは比べものにならないぐらい高性能のものが数万円で手に入ります.皆さんもご両親に昔の値段について聞いてみてください.きっと色々語ってくれるのではないでしょうか.
 物価が変動する要因は,価格の決まり方について思い出してみるとわかります.ダイヤモンドの値段は需要と供給で決まりましたよね.それから考えると,需要が高まることで物価が高くなるということもありますし,生産するための費用が(供給側)高くなることで物価が高くなることも考えられます.前者をDemand Pull Inflation,後者をCost Push Inflationと呼びます.

 ようやく名目値と実質値です.
 名目値とは我々が普段目にする値です.具体的には学生が受け取るバイト代や僕の給料は名目所得です.しかし名目所得は必ずしも豊かさを反映していません.なぜなら名目所得が同じでも物価が下がれば豊かになりますし,物価が上がれば貧しくなります.高度経済成長期の日本は物価も上がっていましたが,それを上回るペースで賃金が上がっていました.そのため,物価が上がっても豊かになっているという実感が得られたのでしょうね.現在は,物価が下がっている(あるいはあまり上がっていない)ので,実際にはあまり貧しくなっていないのかもしれませんが,賃金カット,ボーナスカットというニュースをよく聞くせいで非常に貧しくなっているような気がしますね.
 授業では,名目所得と実質所得,名目GDPと実質GDPを計算しました.ポイントは所得やGDPから物価の変動を差し引いてやることでした.

 ちなみにインフレによる犠牲者(デフレにより恩恵を受ける人)は皆さんではなく,年金やこれまでの貯蓄で暮らしている高齢者です.なぜだか考えてみてください.

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