2009年5月30日土曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第7回

 今回から企業行動の分析です.

【授業の内容】
 まず,完全競争市場の復習をしました.今後の話はすべて完全競争市場を舞台としています.またしばらくは,短期における企業行動を分析します.

 短期とは,生産設備の変更ができない期間のことです.例えば,これまで1日100食ぐらいを作っていたお弁当屋さんに大手コンビニチェーンから1日3000食作って欲しいという依頼が来た場合,現状のままの設備ではとても無理でしょうから,新しく工場を用意しなければならないでしょう.完成までにかかる期間は半年でしょうか?1年は必要でしょうか?それぐらいの期間は長期です.しかし1週間とか10日とかいう期間は明らかに短期でしょうね.長期の話はもう少し後で取りあげます.しばらくは短期について考えましょう.

 まず企業の目的を考える必要があります.経済学はとかく,「目的は何か?」を最優先に考えます.目的が決まってなければ行動できませんもんね.
 ここでは企業の目的は利潤(Π)の最大化であるとします.またその利潤は収入(R)から総費用(TC)を引いたもので表されます.つまり,
 Π=R-TC
ということです.このうち収入は価格(P)と生産量(X)を掛け合わせたものです.つまり,
 R=P×X
です.生産したものが売れ残ったらどうするんだ?という疑問も出てきそうですが,完全競争市場の条件より,他の企業と同じ価格で売っている限り,どれだけ生産してもすべて売ることができると考えています.
 総費用は固定費用(FC)と可変費用(VC)に分けることが可能です.
 TC=FC+VC
固定費用とは,生産量に関係なく発生するコストのことです.つまり生産してもしなくても発生するものです.例えばパン屋さんであれば,パンを売るためのテナント代や,生産に必要な設備の購入代金がそれにあたるでしょう.一方,可変費用は,生産量が増えるに従って増加するものです.パン屋であれば,原材料費や,バイト代などがそれにあたるでしょう.

 さて,企業は生産に必要なもの(労働力や原材料など)を投入し,財を生産します.その際の効率性については,生産規模が大きくなるに従って生産効率が悪くなるような収穫逓減,生産規模が大きくなるに従って生産効率が良くなる収穫逓増,生産規模に関係ない収穫一定という3パターンに分類されます.このうち,収穫逓増は,世間ではスケール・メリットが働く,という呼び方をされることが多いようです.ここでは,長い目で見ると収穫逓減の企業を想定しています.

 ようやく舞台の説明がすべて終わったので,具体的な数値で考えていきます.配布した資料のような,小規模の生産者を例に,どうすれば(どこに着目すれば)利潤が最大になるかを考えました.
 実際に手を動かして,色々計算をした結果,唯一の投入財である労働の価格,つまり賃金とその限界生産力のバランスが重要であることがわかりました.

0 件のコメント: