2009年6月13日土曜日

経済学A 第9回

 今回は為替について説明しました.

【授業の内容】
 円高・円安という言葉はよく聞きますが,直感的に分かりづらいので,あやふやに理解している人もいると思います.今回は為替についてじっくり説明しました.
 円高・円安という言葉は,他の通貨(米ドルやユーロなど)と比較して円の価値が高くなった・安くなったという意味です.そのため円高とは(米ドルで言えば)ドル安を意味しており,円安はドル高を意味します.1ドル=100円という交換比率は1ドルというモノを買うために何円が必要なのか,と考えれば,1ドル=80円がドル安(つまり円高)を意味しており,1ドル=120円がドル高(円安)を意味しているとわかると思います.

 さて,世間では「円高=悪いこと」のような風潮がありますが,果たしてなぜ悪いのでしょう?そもそも本当に悪いことなのでしょうか?授業では具体的な商品(財)を想定して,日米での貿易の数値例を見てみました.そこから,円高になるとアメリカでは日本からの輸入品が高くなるので,日本の輸出企業にとっては困ったことになります.実際に大企業の多くは想定為替レートを設定しており,1円の円高・円安がどれだけ利益に影響を与えるかを事前に計算しています.海外依存度が高い企業にとって円高というのは非常に大きな問題です.
 このように輸出企業にとって円高は迷惑ですが,日本全体にとっても困ったことかと言うと一概には言えません.逆に,海外から輸入して,それを国内で販売する輸入企業にとっては円高は,海外の商品を安く買うことができるため有利です.例えば日本マクドナルドのように世界中から材料を買い付けている企業にとっては円高になればなるほどありがたいでしょう.また我々消費者にとっても円高はメリットの方が多いはずです.例えばガソリンの日本国内での価格は(世界市場の相場が一定であるとすれば)円高になれば安くなるはずです.その他,我々は海外からの輸入品に囲まれているので,生活はしやすくなるでしょうね.

 為替相場は変動するために,(我々もそうですが)企業は大きく影響されてしまいます.この為替相場は一体どこで決まっているのでしょう?株価は株式市場で決まっていますが,為替はどこで取引されているのでしょうか?我々には馴染みがありませんが,主に短資会社の仲介により銀行間で取引されているようです.そこで円を売りたい人より買いたい人の方が多ければ円高になりますし,逆であれば円安になります.以前に学んだように,価格は(為替の場合も)需要と供給のバランスにより決まります.このように為替が変動することに目をつけ,安く買って高く売る(裁定取引と言います)ことで儲けようという人もいます.近年,日本では普通の人がFXという外貨取引にお金をつぎ込むケースが増えているようです.FXは少ない元手で大金を手に入れられるというイメージですが,大金を手に入れられる(ハイ・リターン)であるということは,大金を失う可能性もある(ハイ・リスク)であるということです.普通の金融商品(銀行預金,国債,株式,投資信託)と違って怖いところは,元本が保証されないだけでなく,元本をすべて失って,さらに借金まで背負う可能性がある点です.一般の人が巨額の脱税をしたり,またとんでもない借金を背負うケースが出てきたために,現在,政府はレバレッジの規制を健闘しているところです.
 FXよりはリスクの少ない金融商品として,外貨預金も説明しました.預金というと安全なイメージですが,実際には外貨預金は元本は保証されず,預金と言うより株式投資に近いと考えて良いでしょう.

 最後に様々な為替制度を紹介しました.普段は為替と言えば,変動相場制度(為替レートが刻々と変わる)が当たり前と考えがちですが,実は変動相場制以外の制度を採る国の方が多いのです.特に(経済力が)小さな通貨は固定相場制やペッグ制により,為替の変動を防いでいます.

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