2009年6月27日土曜日

経済学A 第11回

 今回はグローバリゼーションでした.個人的には,皆さんが将来を考える上で非常に重要なテーマだと思っていますが,それが伝わったでしょうか?

【授業の内容】
 まず前回の補足として,比較生産費説で考えると世界中の国が自由貿易をするべきのように思えるのに,どうして自由貿易が実現しないのかを考えました.自由貿易は,比較劣位にある産業を縮小させます.縮小とは現実経済では,倒産,解雇など様々な痛みを伴うので,当然ながら反対する勢力が出てきます.
 また,かつての日本の自動車産業のように,今は比較劣位にあっても今後は成長が見込める産業を政府が保護することで,比較優位を持つまでに育つ場合もあります.つまり比較優位・比較劣位は固定したものではなく,政策,あるいは民間企業の創意工夫,世界的潮流の変化など様々な要因により変化しうるのです.
 保護貿易をするための手段としては,輸入品に対する関税や,保護したい産業への補助金の交付という例が多いですが,その他にも輸入数量制限などもあります.

 しかし,自由貿易が(個別の産業はともかく)国全体にとって良い影響を持つことは明らかなので,現在では各国が自由貿易に関する協定を他国と結ぼうと積極的に動いています.自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)はしばしばニュースでも採りあげられます.最近は日本とインドネシアのEPAの結果としてインドネシア人の看護師,介護士を受け入れたことは話題になりました.これも言い換えれば,看護サービスや介護サービスの分野において,日本はインドネシアに比べ比較劣位にあるからこそ,日本は看護・介護サービスを輸入することになりました(逆に日本人がインドネシアで介護・看護をするケースはほとんどないでしょう).
 
 さて,本題のグローバル化ですが,授業ではいくつかの具体例を紹介しました.ここではそれらの具体例から見えてくる,一般的な法則を考えてみます.
仕事(産業)は,それを実現できる国のうち,より賃金の安い国へと移動する.
 かつてイギリスでは繊維産業を中心とする産業革命が起きました.イギリスは繊維産業においてもっとも効率良く生産できる国でした.しかし,繊維産業の中心は,イギリスから(当時は)賃金の安かった日本へと移り,さらに賃金の安い中国へ,そして(今後はおそらく)ベトナムやカンボジアなどの低所得国へと移動します.自動車についてもかつてはイギリス,アメリカが中心で,現在は日本が比較優位を持っているようですが,今後は中国やインドなどのより賃金の安い国へと移りそうです.
 このことは結果として,
どこでも,だれでもできる仕事の賃金は下がり続ける.
 ということが推測できます.言い換えれば,今後も高い賃金を得ようと思えば,少数の人しかできない,もしくはできる場所が限定される仕事を選ばなければならないことがわかります.
 世界的に見ると大卒の人口というのは少数派です.そう考えると,大学で専門的な知識を身につけることは,グローバル化する世界では重要です.
・グローバル化は止められない.
 まず間違いなくグローバル化の流れは止められません.皆さんは様々な側面で外国の人々と交流する場面はふえるでしょうし,また競争する場面も増えるでしょう.
・グローバル化は必ずしも先進国(日本)にとって悪いことではない.
 授業では日本人の賃金はこれから途上国と比べると相対的に安くなると言いました.途上国の人々が日本人と同じ仕事を安くできるのであれば,企業は必ずしも日本人を雇うとは限りません.
 しかし,グローバル化は外国人の流入・仕事の流出を引き起こすだけでなく,日本人・日本の企業が外国に進出するためのハードルを下げてくれます.今後人口が減少していくと予測される日本だけで満足するのではなく,世界に打って出ようという企業は沢山あります.先日(2009/6/25)の日経新聞の第一面にも,ユニクロやファミリーマートなど生活関連の大手企業がアジアへの出店を増やし,近い将来,国内よりも国外の売上や店舗数を増やす予定であることが紹介されていました.
 世界に出て挑戦しようという意欲のある人にとっては,グローバル化はチャンスを増やしてくれます.

 以下は,ぜひ今のうちに読んでほしい本のリストです.
トーマス・フリードマン(2006)「フラット化する世界」日本経済新聞社
ドン・タプスコット,アンソニー・ウィリアムズ(2007)「ウィキノミクス」日経BP社

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