2009年6月4日木曜日

経済学A 第8回

 今回は,前回に引き続き株の話でした.

【授業の内容】
 前回は株について考えるための理論的基礎を説明し,今回はやや実践的な内容でした.まず,前回の講義の最後で話した,「毎年1万円もらえる魔法のカード」をいくらで買うかを考えてもらいました.実はこれを考えてもらったのは株価の分析方法の1つであるファンダメンタル分析を理解するためです.ファンダメンタル分析とは,将来受け取れるであろう配当の現在価値の合計が株価であるという考えです.そのため将来受け取れる配当が多くなると予想されれば株価は高くなります(魔法のカードで言えば,毎年もらえる額が増えれば,このカードの購入希望価格も上がるでしょう).また配当の現在価値であるので,利子率が関係することもわかります.
 結論としては,このファンダメンタル分析が重視するのは,その企業の将来の配当,そしてそれを決めるであろう,将来の利潤,売上げ,今後の新商品,研究開発など多岐にわたります.このため,ファンダメンタル分析で株価を予想しようと思えば,その企業について詳しくなることが第一条件です.
 一方,テクニカル分析という分析方法もあります.こちらはファンダメンタル分析とは異なり企業業績は重視せず,その企業の株価の過去の推移であるチャート図から,将来の値動きを予測するというものです.過去を見れば将来がわかる,というとなんとなくそれらしいですが,特に理論的な裏付けはありません.むしろ「こういう動きをした後は,こうなることが多かった」という経験則の集合体と言うべき分析方法です.この分析法のメリットとしては,なんと言っても「わかりやすく,とっつきやすい」ということでしょう.デメリットとしては,「テクニカル分析に従えば儲けられるという実証結果が得られていない」という点です.分かりやすく言うと,テクニカル分析の言うとおりに売買するのも,サイコロの出た目で適当に売買するのも似たようなもんだ,ということです.致命的ですね….つまり将来の予測には使い物がならないということです.しかし「テクニカル分析で儲けた」という人は後を絶ちません.実際,「テクニカル分析 万円稼いだ」というキーワードで検索するとたくさんヒットします.それもそのはず,株というものは全体の株価の平均が下がっているのでなければ,適当に買っても半分ぐらいの人は儲かるからです.そのためテクニカル分析で儲かった一握りの人が「テクニカル分析は正しい」というのでしょう.

 さて,株というのはリスクのあるものですが,そのリスクを減らすこともできます.リスクヘッジの例として,猛暑になるか冷夏になるかという気象リスクを考えてみました.猛暑になったら,自分が持っているすべての株が下がってしまった,というのではリスク対処になりません.猛暑の時,ある株は下がったが,あの株は上がった,となるような組合せをする必要があります.最大のリスクヘッジは分散投資です.ケインズは「卵は分けて持て」と言いました.ただし,分散投資をするとリスクが減る代わりにリターンも下がります.

 後半は,資産運用について説明しました.株を買うかどうかは,あくまで「(目的達成のために)他の手段に比べて優れているか?」を考えなければなりません.株より良い手段があれば株を買う必要はありません.他の資産運用手段にはどのようなものがあるのでしょう.授業で説明したのは次の通りです.

  • 銀行預金:リスクは低いが,リターンもかなり低い
  • 債券(国債,地方債など):国債はリスクはかなり低く,リターンは低いが銀行よりはマシ.定期預金のようなもの.
  • 投資信託:リスクは中程度,リターンも中程度.プロが運用するのでやや安心?ローリスク・ローリターンを目指すものから,ミドルリスク・ミドルリターンを目指すものなど様々.
  • FX(外国為替証拠金取引):かなりハイリスク・ハイリターン.普通の人は手を出すべきじゃないと(僕は)思います.
  • その他:金,RIET,様々なファンド

 上記のような金融商品の説明をしました.この中から自分の目的に合ったものを選びましょう.ただし,どんなに探しても「ローリスク・ハイリターン」な商品はありません.あるとすれば詐欺か,インサイダー取引(犯罪)でしょう.美味い話はなかなかありませんし,あったとしても普通の人である我々には回ってきません.あまり知らない人から「あなただけに教えるけど…」と言われても信じてはいけません.美味い話があれば,誰かが既に独り占めしているはずです.

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