2009年6月28日日曜日

経済学Ⅱ 第11回

 今回から市場の失敗です.そのうち公共財について説明しました.

【授業の内容】
 これまでの授業はすべて完全競争市場という空想上の世界でのお話でした.今回からはそれを少しずつ現実に修正していきます.
 これまでの結論として,前回,厚生経済学の第一基本定理を説明しました.完全競争市場では市場に価格と量の決定を任せておけば,社会的にもっとも望ましい資源配分が実現できるということでした.

 ただしそのように市場は上手く働くばかりではありません.異なった条件では必要なものが生産されない(過剰に生産される),価格が高すぎる(安すぎる)という不具合を引き起こしてしまいます.
 今回の公共財は,市場に任せておいても生産されない財です.

 通常の財(私的財)は市場において,つまり民間側で生産されます.政府などから命令されなくても,利益の追求を目指す企業が自動的に生産します.ただし,企業は,今回採りあげる公共財を作ることはありません.なぜなら公共財はタダで消費されてしまう(ただ乗りされる,フリーライドされる)ため,儲からないからです.
 さて,公共財とはどのような財なのでしょう.公共財は次の2つの特徴を兼ね備えています(どちらか一方だけではダメ).

  1. 非競合性:複数の人が同時に消費しても,その財の価値が低下しないような性質を持つこと.(例:講義,ラジオの放送,国道など)
  2. 非排除性:特定の個人の利用を排除できないこと.つまりどんな人でも利用できること(しかもタダで).(例:公園,灯台の光,警察など)

 公共財はこのような特徴を備えています.逆にこの2つの特徴をどちらも備えていない財(つまり競合性と排除性を持つ財)は私的財と呼ばれ,どちらか一方だけ持つ財は準公共財と呼ばれます.

 これまで説明してきたように公共財はタダ乗りされてしまうため,営利目的である企業によって生産されることはまずありません.しかし道路や公園,警察などは我々の生活に必要不可欠です.そのため,私企業に代わって政府がこれらの財を供給します.そのため公共財と呼ばれるのです.

 公共財についてのもう1つの問題は,どれだけ生産するべきかわからない点です.私的財であれば,市場により自動的に生産すべき量や価格が決まってくるので問題ありませんが,公共財は市場で取引されないため,生産者である政府には,消費者がどれだけ必要としているか,またどれだけお金を負担して良いと考えているかがわかりません.そのため不必要な道路などの公共工事が行われることになる(あるいは必要な道路が建設されない)という問題を引き起こします.

 じゃあどうすればよいか,という話もしましたが,現実にできるかと言うとなかなか難しそうですね….

0 件のコメント: