2009年6月21日日曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第10回

 今回は価格決定理論です.今回から,ここまでの知識を使って経済全体を見ていきます.

【授業の内容】

 価格決定理論とは,どのようにして財の価格が決定するのかを説明するモノです. まずワルラス型価格調整メカニズムを説明しました.ワルラス型は,まず価格ありき,です.企業が価格を決定し,それに応じて需要あるいは供給が決定するというものです.その際,需要より供給の方が多い場合(超過供給)は価格が下がり,逆に需要の方が多ければ(超過需要)価格は上がります.需要曲線と供給曲線が具体的な関数として与えられれば(授業では直線にしました),ある価格の下で,どれだけ超過需要,もしくは超過供給が発生しているかを計算できます.また,均衡において価格と量がそれぞれいくらになるかも計算できます.授業ではこの計算はちょっと説明を省いてしまいましたので,授業の後に質問も出ました.たしかに経済学として考えると,均衡はどこかはわかりづらかったかもしれませんが,数学的に見ると直線と直線の交点に過ぎないことに気づくと思います.今後も数学的な表現を経済学的に解釈すること,そして経済学的表現を数学的に理解すること,この両方が必要となってきますし,その作業は理解を助けてくれるはずです.

 通常の右上がりの供給曲線と右下がりの需要曲線であれば,価格の初期値がどこであっても,試行錯誤を繰り返して,最終的には必ず需要と供給が等しい点(均衡)に行き着きます.このような動きは安定的である(あるいは収束する)と言います.

 ワルラス型に対して,マーシャル型価格調整メカニズムというものもあります.こちらは,まず生産量ありき,です.企業が生産量を決め,それに対応する供給価格(売りたいと思う値段)と需要価格(買いたいと思う価格)が決まります.供給価格より需要価格の方が高ければ(超過需要価格),企業は生産量を増やします.逆に供給価格の方が高ければ生産量は減少します.

 マーシャル型の場合も最終的には需要価格と供給価格が等しい均衡に無かって安定的に収束します. 皆さんが普段目にする値段で,おそらく一番値動きが激しい財は野菜ではないでしょうか.特に葉物(キャベツや白菜など)は安いときと高いときの差が激しいような気がしませんか?

 このように価格が安定的に収束せず,乱高下を繰り返す財の価格を説明する理論として,クモの巣理論があります.これは,完成までに時間がかかり,かつ保存ができない財(まさに野菜ですね)の価格を説明するものです.図を使って説明しましたが,ポイントは,その財の価格が提示されてから生産者は生産量を決定しますが,生産までに時間がかかるため,できあがったときの価格は想定した価格とは異なるという点です.クモの巣理論は需要・供給価格のほんのわずかな傾きの違いにより収束したり,発散したりとなかなか微妙な代物です.結論としては,需要曲線の傾きの絶対値が,供給曲線の傾きの絶対値よりも小さければ収束しますが,逆であれば発散しました.

 なお,最後に発展的な内容として,ギッフェン財の需要曲線を考えてみました.通常の需要曲線とは異なりギッフェン財の場合は右上がりの需要曲線になります.このように需要も右上がり,供給も右上がりという珍しいケースでは,ワルラス型とマーシャル型で結果に差が出てきます.

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