2009年6月13日土曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第9回

 今回は企業行動のまとめです.

【授業の内容】
 前回に引き続き,企業行動,特に費用に注目しています.今回新しく,平均総費用(ATC)と平均可変費用(AVC)という2つの費用が出てきました.この2つは,限界費用と共に図示することで,様々なことが直感的に理解できるようになります.
 平均総費用は,生産には様々な費用がかかりますが,それらをトータルして,生産量1個あたりにはどれだけの費用がかかっているかを示すものです.そのため,これより価格が高ければ最終的に黒字になるし,逆であれば赤字になる,という目安になるものです.企業は(当たり前ですが)財が高く売れれば儲かるし,安くしか売れないのであれば赤字になるでしょう.そしてそこには,ここより高く売れれば黒字,そうでなければ赤字という境界線があるはずです.それは損益分岐点と呼ばれ,限界費用と平均総費用が交わる点の価格です.
 平均可変費用は,生産量1個あたりにどれだけの可変費用がかかっているかを示すものです.つまり生産したことで発生した費用(これが可変費用ですね)を生産量で割ったものです.平均可変費用が価格よりも低ければ,生産した財1個当たりから得られるお金(価格)の方が,財1個あたりの,生産したことにより発生した費用より高いので,生産しないよりした方が良いことがわかります.ここでも,これ以上の価格で売れるなら生産した方が良いが,そうでなければ生産を停止すべきという境界となる価格があり,それは操業停止点と呼ばれます.図では,限界費用と平均可変費用の交わる点の価格として表されました.
 操業停止点についてはちょっとわかりにくいので,異なる説明をしましょう.総費用は可変費用と固定費用からなります.固定費用は生産しようとしまいと,最初から固定です.親の残した借金のようなものと考えれば良いでしょう(ただし相続放棄はできない).その借金(費用)は仕方ないものとして,ではこれから生産すべきか生産すべきでないかを考えましょう.生産すると,その財を販売することで収入が得られます.これが生産のメリットです.一方で生産することで様々なコストが発生します.これが可変費用です.まとめてみましょう.

生産するメリット:収入(R)が生まれる
生産するデメリット:可変費用(VC)が生まれる

 このメリットとデメリットのどちらが大きいかで生産するかどうかを決定します.収入の方が可変費用より大きいのであれば(R>VC)生産します.この式を両辺ともに生産量(x)で割ってみましょう.左辺のRはR=P×xなのでxで割ればPが残ります.右辺をxで割ってみるとAVCが出てきます.つまりR>VCとはP>AVCと同じものなのです.
 そのため価格が平均可変費用よりも高ければ生産すべきだし,逆であれば生産を停止します.このように,操業停止点というものがあり,その右上の限界費用曲線を見れば,価格がいくらであればどれだけ生産すべきかがわかります.これは企業の供給曲線そのものです.
 この範囲の例題はたくさん配ったのできっちりとやっておきましょう.ワンパターンだから覚えることはそんなに多くありません.

 これまでの範囲はすべて短期における企業について見てきました.最後に,長期の場合の生産についても確認しました.

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