2009年10月4日日曜日

経済学Ⅰ 第3回

 今回は前回に引き続き,経済学の流れを説明しました.また物価についても説明しました.

【授業の内容】
 前回はケインズ派の台頭まで話しましたね.今回はその続き,ですが,せっかくなので復習も兼ねて古典派から振り返りました.
 市場を信頼し,最低限の介入しかしない古典派は世界大恐慌に際して,有効な打開策を見つけることができませんでした.その時,積極的な財政支出を唱えたケインズ(ケインズ派)が脚光を浴びます.ケインズ派は市場を信頼しておらず,市場が上手く働かない場合(市場の失敗)には,政府が積極的に介入すべきだと考えます.有効需要の原理と呼ばれる,需要の大きさが供給(GDP)を決めると考えを持っているので,景気が悪いとき(GDPが伸び悩んでいるとき)は需要が不足していると考えます.そのため,需要が足りないのなら,景気回復策として政府がその需要を補うように支出することになります.
 さて,このようにケインズ派は世界大恐慌以来,経済学の世界のみならず,現実経済にも大きな影響を持っていたわけですが,ケインズ派の積極的な財政支出は,日米などで巨額の財政赤字(政府の借金増大)という副作用をもたらしてしまいました.そこで改めて注目されたのは,市場を信頼する(政府に頼りすぎない)古典派です.復権した古典派(新古典派)によれば,政府による経済活動は効率が悪いだけでなく,民間企業の活力を削いでしまうという欠点があります.そのため,政府は最低限の経済活動だけを行うべきとして,公営企業の民営化を進め,また民間企業の活力を生むべく規制緩和を行って企業間の競争を促しました.日本でも1980年代には,国鉄(→JR),電電公社(→NTT),専売公社(→JT)の3公社が民営化されることになりました.またその後,バブル後の失われた10年を経て誕生した小泉内閣においても,郵政民営化が実現したことは記憶に新しいですね.
 このように,民営化とは民間企業ができることは民間にやらせることです.その根拠は民営化した方が効率的だから,という理由なのですが,実際に鉄道,電信の両分野は民営化後にずいぶん効率が良くなりました.新古典派のもとでは,政府は最低限の経済活動しか行わないので,財政支出が少ない分だけ税金も少なくて構いません.このような低負担・低福祉を基調とする政府は,小さな政府と呼ばれ,税金が高い代わりに福祉水準も高い(高負担・高福祉大きな政府派としばしば比較されます.
 新古典派は経済の活力を重視するため,企業による競争も活発になり,経済全体の成長力も高まるでしょう.しかしデメリットとしては,激しい競争により敗者(貧困層)が生まれることです.日本において,貧困,格差社会,ワーキング・プアーという言葉が目立つようになったのも小泉政権以降のことですね.
 大きな政府と小さな政府はどちらが正しい,間違っているというものではありません.我々がどちらが望ましいと考えるか,我々はどんな世界に住みたいのか,という好みの問題であると言って良いかもしれません.税金は安いけれど,福祉はしっかりしてくれる(低負担・高福祉)政府というのは理想的ですが,現実的ではありません(産油国などの例外は別として…).我々は闇雲に税率アップに反対するのではなく,税金が高くなった代わりに政府は何をしてくれるのか,税金が有効に使われているかに注目すべきだと,僕は考えます.

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