2009年10月22日木曜日

経済学A 第5回

 今回は物価とは何か,そして名目値と実質値の違いを説明しました.最終的には,インフレは良いのか?それとも悪いのか?を理解できるようになったと思います.今回の内容は,次回の年金について理解するためのステップになっています.

【授業の内容】
 まず,物価とは何かを説明しました.「これが物価だ!」というものはありません.というのは,同じ財(モノやサービス)をとっても,我々消費者にとっての価格だけでなく,メーカーが販売するときの価格もありますし,問屋が小売店に売るときの価格,など様々な価格があるからです.そのため,物価を測るためには以下のような複数の指標が用いられます.
・消費者物価指数(CPI, Comsumer Price Index)
・企業物価指数
・GDPデフレータ など

 物価というのは固定したものではありません.場所により,時代により変化しています.場所による違いを横断面の違い,時代による違いを時系列の違い,と呼ぶことがあります.それぞれの具体例をいくつか紹介しました.
 では,なぜそのように物価は変動するのかについて理解するためには,第2回に学んだ「ダイヤモンドはなぜ高いのか?」が役に立ちます.その結論は,需要と供給のバランスにより価格が決まるということでした.そのため,当然ながら,物価の変動の原因は,需要と供給のいずれか,もしくは両方が変動したためでしょう.需要の増加による物価上昇はDemand Pull Inflation,供給側のコスト上昇による物価上昇はCost Push Inflationとそれぞれ呼ばれます.

 さて,本題である名目値と実質値の違いですが,授業では,所得とGDPを例にとり,それぞれの違いを説明しました.我々は普段,名目値に目を奪われがちですが,本質的な理解のためには実質値に目を向けなければなりません.
 名目所得と実質所得の例としては,徳島と東京に住む人のどちらが豊かなのかを考えてみましょう.名目所得で言えば圧倒的に東京です.東京は全国の都道府県の中でも飛び抜けて県民1人あたりの所得が高いです.徳島は全国22位と中位です.(2005年のデータ,総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた2009」http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001016650&cycode=0
 しかし,実際に人々の生活が豊かなのかを考えるためには,この比較だけでは不十分です.なぜなら東京と徳島では物価,とくに住宅費が大きく違うからです.そのため,それぞれの地域の物価の違いを考慮しなければ実質的な豊かさ(実質所得)はわかりません.計算してみると,やっぱり東京の方が実質所得も高いのですが,差はある程度縮まります.また,東京は所得格差が大きいと推測できるので,20代のサラリーマンなどで比較すると実質所得にあまり差はないように思います.

 最後にインフレやデフレは良いのか,悪いのかを立場を変えて考えました.働いていて収入がある層にとってはある程度のインフレは害はないでしょう.物価に比例して賃金も増加するためです.ただし,すでにリタイヤしており,過去の貯蓄で生活している高齢者にとってはインフレは貯蓄額を実質的に減らしてしまう(貯蓄の価値を失わせる)というデメリットが大きいです.一方,借金を抱えている人にとってはインフレはありがたい現象です.なぜなら物価の上昇は借金の実質的な価値を減らしてくれるからです.

 来週は年金について説明します.

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