2007年11月12日月曜日

経済学Ⅰ 第8回

 前回に引き続き金融政策です.

【授業の内容】
 日銀が市場に貨幣を供給する手段は,前回説明した公定歩合の他に次の2つがあります.

公開市場操作
 公開市場操作とは日銀が手形や国債などの債権を売買することで貨幣の供給を調整するものです.
 例えば日銀が市中銀行から国債を10億円分購入すると,日銀は国債を手に入れる代わりに代金として10億円を市中銀行に支払います.するとお金は日銀から民間へと流れます.このように債券を買うことにより貨幣供給量を増加させることを買いオペレーション(買いオペ)と言います.
 逆に日銀が手形や国債などを売却するとどうなるでしょう?日銀は国債を手放し,その代金を受け取ります.つまり民間側から日銀側にお金が流れるため,マネーサプライは減少してしまいます.こちらは売りオペレーション(売りオペ)と呼ばれます.

支払準備率(預金準備率)の操作
 市中銀行は顧客からの預金のうち一定割合を日銀に預けなければなりません(日銀当座預金).この割合を支払準備率と呼びます.突然顧客が「預けているお金を返してくれ!」と言ってきた時の,支払いに準備しておくお金です.ちなみに実際の支払準備率は,預金の種類により異なりますが,おおよそ10%ぐらいです.
 日銀がこの支払準備率を上げると,市中銀行は預金のうち多くを日銀に預けなければならないので,当然マネーサプライは減少します.逆に支払準備率を下げれば,マネーサプライは増加しますね.

 さて,この支払準備率を理解すると,現金(マネタリーベース)が70兆円しかないのに,貨幣供給量(マネーサプライ)は700兆円もあるのかがわかります.2通りの方法で貨幣が増えていく様子を説明しましたね.この貨幣の増殖?を信用創造と言いました.信用という言葉は以前にも出てきたのを気づきましたか?

 最後に,金融政策のまとめとして,金融緩和金融引き締めがそれぞれどんな効果をもたらすのか確認しました.金融を緩和すると,利子率が低下するので投資を呼び起こし,景気回復につながります.じゃあどんどん金融緩和すれば良い(極端に言えば1万円札をたくさん刷ってバラ撒けば良い)かと言うと,そう簡単ではありません.なぜなら貨幣供給量が増加すると物価にも影響を与えてしまうからです.お金があまりないときと,有り余ってるとき,どちらの場合にある商品に高いお金を出そうと思うか考えてみるとわかりますが,貨幣供給量が増えれば物価は上昇してしまいます(インフレーション,インフレ).
 逆に金融引き締めを行えば,物価を落ち着かせる,あるいは下げる(デフレーション,デフレ)ことができますが,利子率の増加を招いてしまうので,企業の投資意欲を削ぐことになります.結果として景気も停滞してしまうでしょう.なかなか一石二鳥とは行きませんね.
 とはいえ,中央銀行である日銀がより重視すべきは物価の安定であり,次いで景気だと思います.日銀総裁は,景気をあまり冷え込ませないようにしながらも,物価を安定ささねばならぬという難しい舵取りをしなければなりません.

 金融はひとまずここまで.中間テストの範囲もここまでです.

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