2008年10月12日日曜日

経済学Ⅰ 第5回

 今回は失業,そして労働市場についてです.

【授業の内容】
 まず現在の失業の状況と,失業者(と完全失業率)の定義から説明しました.失業者の定義を知らなければ,現在(2008/8)の失業率4.2%は「結構低いじゃないか」と思うかもしれません.実際に先進国間で比較すれば低い方ですしね.
 ただし,失業者と認定されるには結構厳しい条件があります.授業では,次の4者のうち,失業者はどれかを考えてもらいました.
1.それまで正社員として働いていたが,出産を機に退社した専業主婦
2.バイトをしていない学生
3.就職活動をしているが,現在は生活費を稼ぐためバイトをしている人
4.就活をしてみたが,思ったより厳しくて諦めてしまったニート

 「1.2.は失業者じゃなさそうだな,3.4.は失業者かな?」という人が多かったと思いますが,実際には全員失業者ではありません.失業者とみなされるには,就業を希望し,就業が可能であって,求職活動をしており,なおかつまったく働いていない,という条件を満たさなければなりません.

 さて,この失業ですが,経済学的にはどう捉えるのか,古典派とケインズ派の立場から説明しました.市場を信頼する古典派からすると,失業が発生すると賃金が下がるので失業は解消されるはずで,実際に失業している人は自発的失業だ,と考えます.一方のケインズ派は市場を信頼していません.賃金に関しても下方硬直性という性質があるため,市場に任せておいても失業は解消されないのです.

 後半はこの賃金の下方硬直性が発生する理由を説明しました.その理由として次の4つを挙げました.
1.労働組合の存在
2.相対賃金仮説
3.効率賃金仮説
4.インサイダー・アウトサイダー仮説

 では労働者の賃金は下がってないのか,というとこれまた難しい問題です.正社員の賃金だけを見れば下がっていないかもしれませんが,近年労働者に占める正社員の割合はどんどん下がっており,その代わりにパート・フリーター,契約社員,派遣社員といった非正規労働者が増え続けているからです.
 今回は配付資料で正規労働者と各種の非正規労働者の賃金の分布を確認しましたが,非正規労働者の賃金の低さには驚いたのではないでしょうか?ワーキングプアという言葉が流行ったのもここ最近のことですね.

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