2007年6月7日木曜日

開発経済学 第8回

 今日はようやく第1回レポートを返却しました.Dがついた人は今後は真剣にやること.同じことしたら単位あげません.その後,マイクロ・ファイナンスを説明しました.

【授業の内容】
 ムハマド・ユヌス氏のグラミン銀行を例にマイクロ・ファイナンスが,それまでの金融とどこが異なるのかを説明しました.
 わずかな資本がないために,高利貸しから借り入れ稼いだお金のほとんどを返済せざるを得ない途上国の女性を例に,マイクロ・ファイナンスが彼女を「貧困の悪循環」から救い出す可能性を説明しました.
 マイクロ・ファイナンスとは,「貧困層や低所得層を対象とする小規模な金融」であり,グラミン銀行は,無担保,最小融資額の小ささ,高い返済率,という特徴を持ちます.また顧客の約97%が女性である点でも,既存の銀行とは異なります.グラミン銀行以前も農村の貧困層向けの金融機関(主に政府系)はありましたが,低利,低返済率などのために持続性を持ち得ませんでした.
 マイクロ・ファイナンスの登場により,貧困層の生活は所得の増加,消費の平準化(リスク耐性),資産形成,政治的発言力,ジェンダーなどの点で改善されたと言われます.
 一方,貧困層の搾取である,最貧困層が排除されている,などの点でマイクロ・ファイナンスが批判されることがあります.私感ながら,マイクロ・ファイナンスは最善のシステムではないかもしれないが,少なくとも登場以前に比べ貧困層の選択肢を増やしている点を考慮すれば,批判するのは見当違いであると思います.批判する時間があれば,マイクロ・ファイナンスより素晴らしいシステムを生み出す時間に充てるべきでしょう.
 授業では触れることができませんでしたが,1997年にグラミン銀行はグラミンテレコムという会社を設立し,携帯事業に参入しました.グラミン銀行で資金を借りて携帯電話を1台手に入れた女性が,安い料金で村民全員に使えるようにし,その使用料でローンを返済する仕組みを作りました.現在ではバングラデシュ国内2000万人以上がその恩恵を受けることができます.(注:多くの村には固定電話がない,あるいは少ないのです)
 ちなみにその他のマイクロ・ファイナンスの機関としては,インドネシアのBRI Unit Desa,BKK,ボリヴィアのソリダリオ銀行,インドのSEWA銀行などもあります.
【参考文献】
岡本真理子他(1999)『マイクロファイナンス読本』明石書店
ムハマド・ユヌス(1998)『ムハマド・ユヌス自伝』早川書房

第1回レポートの評価について
 評価に不満がある場合は,1週間以内にレポートと評価の紙の両方を持って研究室に来ること.

第2回以降のレポートについて
・第2回レポート 提出日6/14 A4用紙3枚以上(図表を除く)
 A:我々は貧困国のために何ができるのか?
 B:第1回レポートのブラッシュ・アップ
 どちらか一方を選び提出すること.
・第3回レポート 提出日7/12 A4用紙1枚以上
7/5の講座を聴いての感想(欠席者は提出不可)
・第4回レポート 提出日7/12 A4用紙3枚以上(図表を除く)
 課題図書から1冊を選び論じること.要約はダメ.

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