2007年6月11日月曜日

経済学Ⅱ 第10回

 今日は余剰分析について説明しました.市場以外からの介入が社会的余剰を下げてしまう様子を確認しました.

【授業の内容】
 まず,理想的な状況として,競争市場で価格と生産量が決まるケースで消費者余剰,生産者余剰,社会的余剰を説明しました.厚生経済学の第一基本定理によると,この場合に社会的余剰が最大になります.
 次にそれが妨げられるケースを見ました.政府による介入の例として,価格統制,税金,数量制限を挙げましたが,前者2つについて具体的な説明を行いました.
 政府が優しいことに「貧しい人にも安くビールを飲ませたい」と考えると,あまり社会にとっては良くないことが起こります.市場で決まるよりも安く供給するよう強制すると,企業は生産量を減少させるし,消費者は需要を増やすので,超過需要が発生します.そのためにビールを飲める人は以前よりも少なくなります.また超過需要のために,誰にビールを売るかも問題となりそうです.実際に戦後直後の価格統制令下では,売り手は価格の安い表の市場では売らず,それよりはるかに相場の高い闇市に商品を流していました.現在も価格統制は公衆浴場の入場料や,工業用アルコールで残っています.広い意味では,公営住宅も価格統制かもしれませんね.なお,価格統制により,社会的余剰は明らかに減ります.つまり価格統制は余剰分析で考えると望ましいことではありません.
 次に,ビールへの課税の影響を確認しました.酒税は従量税です.つまりビールであれば1リットルあたり222円というように,販売量に応じて税金がかかります.(対照的に消費税は従価税,価格の一定割合が税金です)この場合,消費者余剰と生産者余剰に税収を加えたものが社会的余剰でした.このような課税の場合もやっぱり社会的余剰は減ってしまう(死荷重が発生してしまう)ようです.つまり余剰分析で判断すると課税は良くないようですね.しかし,ビールはその性質を考えれば,売れれば売れるほど社会は良くなるというものでもないでしょう.過剰なアルコールの摂取は社会全体にとっても悪影響であり(これを負の外部性と呼びます,今後授業で出てきます),いくらかの規制も必要かも知れません.このケースではビールは課税前より取引量が下がっており,実は社会にとって望ましいの状況なのかも知れません.

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