2007年6月29日金曜日

開発経済学 第11回

 今回は途上国への支援の1つとしてODAについて説明しました.来週は外務省の方に講義をしてもらうので,その予備知識でもありました.

【授業の内容】
 途上国への支援については,皆さんの中にもずいぶん前から義援活動や募金もやってるのに貧困が目に見えて減少してると感じられないために,「いつまでやればいいのか?」,「どれだけやればいいのか?」という,いわゆる援助疲れを感じる人がいるかもしれません.
 2000年の国連ミレニアムサミットにおいて,日本を含む国際社会は2015年までの期限付きで,達成すべき具体的な8つの目標(ミレニアム開発目標,MDGs)が定められました.ミレニアム開発目標の詳細は以下のページを参照.

外務省:ミレニアム開発目標
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html

 当然ながら,目標を設定するだけで問題は解決されないので,同時に各国が拠出すべきODAの額(先進諸国で年平均2350億ドル)も設定されています.各国は2015年までにODAを対GNI比で0.7%以上にすることを目標としていますが,2006年の日本の拠出額はわずかに0.28%に過ぎず,現在時点で目標を上回る拠出をしているのは,ノルウェー,スウェーデン,ルクセンブルク,オランダ,デンマークの5ヶ国だけという状況です.

 さて,そもそもODAとは何か,ということですが,途上国への援助がODAとみなされるためにはいくつかの条件がありました.その条件は以下の3つ.
・政府やその関係機関により供与されるもの.
・途上国の経済開発や福祉の向上を目的として供与する資金.
・借款はグラント・エレメント比が25%以上であること.
 最後のグラント・エレメント比とは,途上国が市場で資金を調達する場合に比べて,どれだけ借り入れ条件が緩やかであるかを示す指標でした.

 最後に貧困撲滅に向けたいくつかの提案を紹介しました.
 まずはMDGsのプロジェクト長であるJ・サックスは,自国アメリカを対象に,
20万ドルを超える所得に5%の追加税を課し,その分は世界の貧困をなくすためにアメリカの分担金にまわす.2004年には約400億ドルである.その追加税は,アメリカ政府のこうした取り組みを支援するための目的税として払ってもいいし,納税者が直接,国連公認のミレニアム開発目標支援計画をもつ正規の慈善団体などに寄付してもよい.」
 と著書の中で提案しています.サックス(2006)

 続いて僕(水ノ上)の提案としては,
「日本のODAがMDGsを達成するために必要な額を下回る場合,不足した割合だけ個人が貧困削減に取り組む団体に直接寄付を行う.2006年度の実績で言えば,年収500万円の人は21,000円を寄付することになる.」
 というのを考えています.もともと一国全体のODAについてではなく,「僕個人がどんな援助をどれだけすべきなのか」を考えていたので,日本全体のODA不足額を補う案ではありません.この案のメリットは各自が貧困撲滅に必要な援助額を強く意識できる点だと思っています.しかしまだ荒削りですので,細かい修正は必要だと思います.

 最後に学生からの提案を箇条書きに,
・学校のコンビニに(PRODUCT)REDの商品を置き,販売する.体育館や図書館に(PRODUCT)REDの大きなロゴの横断幕を掲げる.
(PRODUCT)REDについては下記を参照.
(PRODUCT)RED
http://www.joinred.com/manifesto/(英語)
世界基金支援日本委員会
http://www.jcie.or.jp/fgfj/productred/(日本語)

・ポスターや新聞を作成し,食堂・購買・掲示板などに掲載する.

・学生全員から募金を集めワクチンを送る.

・募金バトン:ノルマ,スタート地点,ゴール地点を決め,大学から大学,または地域から地域へとそれをつないていく.バトンを渡された大学や地域は一定期間内にその募金ノルマを満たし,次へとまわしていく.ゴールしたら募金を途上国へと送る.

 このように学生からも実現可能?な面白いプロジェクト案が出てきました.いずれもやってみるべき価値のある提案だと思います.興味がある人は一緒にやりましょう.

告知
 来週は必ず出席を取ります.講演会の内容は第3回レポートの課題でもありますので,必ず出席しましょう.また,質問を1つ考えておきましょう.

【参考文献】
J・サックス(2006)『貧困の終焉』東洋経済新報社,p.426.

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