2009年4月10日金曜日

開発経済学 第2回

 今回から人数が激減するかと思ったのですが,あんまり減りませんでしたね.

【授業の内容】
 今日は「貧困とは?(幸せとは?)」についてじっくり考えました.開発経済学とは貧困を撲滅するための学問であるので,当然ながら貧困とは何かをしっかりと理解しておく必要があります.そうでなければ「収入が増えた=貧困がなくなった」と安易な結論を出してしまうかもしれません.収入が低いことは貧困の1つの側面でしかありません.

 まずW.A.ルイスによる「牢獄での裕福な生活は幸せか?」という問いかけからスタートしました.もちろん誰もがNOと言うはずです.ではなぜ幸せではないのでしょう.ルイスは金銭的な豊かさと選択の範囲は別物であり,選択範囲が多いことを目的とすべきだと唱えました.その上で,目標とすべきは(とりあえず)1人あたりの産出量を増やすことだ,としました.結局はお金なのですが,その背景には選択肢という視点があります.
 次に,貧困はどうやって測るのかを説明しました.貧困とは多面的なものであり,「このモノサシさえあれば完璧だ!」というような指標はありません.そのためいくつもの指標が様々な目的のために作られました.
 まずはWHOの考える貧困ラインから説明しました.続いて世界銀行の定義による極度の貧困絶対的貧困),中程度の貧困相対的貧困もそれぞれ紹介しました.これらの指標の良い点は,直感的で理解しやすい点です.
 さらに貧困の集計方法として,貧困者比率貧困ギャップ比率を説明しました.

 これまでの指標はすべて所得がベースですが,所得以外を考慮した指標もあります.その基礎となったのはインドが輩出した偉大な経済学者であるアマルティア・センの研究です.センは潜在能力アプローチという画期的な貧困の概念を作り上げ,様々な分野に大きな影響を与えました.センは機能のリストとして,1人あたりGNP,平均寿命,幼児死亡率,児童死亡率,成人識字率,高等教育就学率を挙げました.この研究はUNDPのHDI(人間開発指数)作成に影響を与えます.
 HDIはマブーブル・ハックが中心となり作成されました.以後,毎年UNDPから人間開発報告という形でランキングが発表されています.現在はこの他にも,HPI(人間貧困指数),GDI(ジェンダー開発指数),GEI(ジェンダーエンパワーメント指数)など多くの指標が存在します.
 続いて,Chambersによる貧困も紹介しました.こちらの切り口はHDIとは異なりました.
 いずれにせよ,貧困というのは多面的なものであることが理解できたと思います.特にChambersの指摘するショックに対する脆弱性などはついつい見落としがちでしょう.

 さて,国際社会は我々に残された課題(貧困の撲滅)に向けて1つの合意をしました.それが2000年国連ミレニアムサミットのMDGs(ミレニアム開発目標)です.それは2015年までに貧困の半減を目指すものであり,それに向けて各国にはODA拠出の増額が求められています.しかし先進国の多くはこの目標(ODAの対GDP比0.7%)をなかなか達成できておらず,貧困半減というゴールにたどり着けるかはかなり怪しくなってきました.

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