2009年4月25日土曜日

開発経済学 第4回

 今回は二重経済と題して,都市と農村の違い,そして都市化に伴う集積の発生について説明しました.

【授業の内容】
 途上国では出生率が高いことを以前に説明しました.乳幼児死亡率も高いのですが,それ以上に出生率が高いため,人口成長率は高い傾向にあります.どんどん人口が増えていった場合,農村部では困ったことが起こります.農地が広くない農家では,労働力が余ってしまうのです….この労働力はどうなるのでしょう?

 その労働力の一部は都市へと流れます.もちろん都市では農業ではなく,それ以外の仕事に従事するのでしょう.農村の余剰労働力は都市へと移り,安い賃金で工業化
を手助けします.
 このように経済成長に連れて,第1次産業から第2次産業を経て第3次産業が経済の中心となることを17Cのペティ(Petty)が発見し,1940年にクラーク(Clark)によって再発見されました.そのため,この法則はペティー=クラークの法則と呼ばれます.日本もかつては国民の多くが農業に従事していましたが,現在では農業はかなり衰退しています.
 ペティー=クラークの法則では第2次産業として一括りにされた工業ですが,さらに軽工業などの労働集約的産業と,重化学工業などの資本集約的産業に分類しました.これらの生産の割合はホフマン比率と呼ばれています.

 今回は都市と農村の関係を描いた2つの理論モデルを中心に話しました.1つ目はルイス(Lewis)の二部門モデルです.これは途上国経済を慣習経済中心の伝統部門と,市場経済の近代部門に分け,伝統部門(つまり農村)の余剰労働が安価な労働力として近代部門(つまり都市部)に流入する様子を描いています.この理論に基づけば,いつしか来る余剰労働の枯渇は農村賃金を高騰させ,農作物価格が上がるため,都市労働者の実質賃金を下げてしまいます.都市で生活できない労働者は農村部に帰ります.そのため都市労働者が不足するので,経営者は労働者を集めるために賃金を上げなければなりません.これにより企業家の投資意欲は減退してしまい,国としては工業化が止まってしまいます.この罠を抜け出すための処方箋の1つは農業部門における生産性の向上があります.
 このモデルでは都市部の完全雇用を前提としていましたが,実際には都市部でも失業は存在します.

 この矛盾を解決するのはハリス=トダロモデル(Harris-Todaro model)です.ハリス=トダロモデルでは,都市部での賃金に期待値を導入しました.都市部で働きたいと考える農村部の余剰労働者たちは期待賃金に胸を膨らませ都市部へ流入するのですが,実際には全員が職にありつけるわけではなく,失業する人も生まれます.この比較的簡単なモデルで都市部の失業が存在することを上手く説明しています.

 さて,都市化が進むと,集積も発生します.集積は,地理的な要因によって生まれる場合もありますが,制度的な要因で生まれることもあります.
 集積には,規模の経済,特化,サービスの多様化などのメリットもありますが,ローカルコストの高騰,混雑効果などのデメリットも生んでしまいます.集積の例としては,日本で言えば東海地域の自動車,東大阪の製造業などですかね.世界的には,ITではシリコンバレーやバンガロール,金融のロンドン,シンガポール,香港などがありますね.

 来週は工業化と貿易についてです.

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