2007年10月30日火曜日

経済学A 第7回

 前回の為替に関連して,今日は貿易について説明しました.貿易と言ってももちろん実務ではなく,理論的な話が中心です.

【授業の内容】
 今日の課題は「なぜ貿易をするのか?」,「貿易はゼロサムゲームか?」の答えを理解することです.
 まずグローバル化と反グローバル運動から始めました.グローバル化の流れはますます速くなっているように感じます.
 前世紀には急速にモノのグローバル化が進みました.いまや我々は国産品だけで生活することは不可能と言って良いでしょう.食品は高いお金を出せばあるでしょうが,純粋な意味で国産の服なんてどれだけあるでしょうか?ましてやパソコンや携帯なんて海外で生産された部品の固まりです.前世紀がモノ(あるいはヒト)のグローバル化の時代であったのに対して,今世紀はサービスのグローバル化が進むと予想する人もいます.(まぁこの話はそのうち講義で)
 というわけで,我々の生活は,時間を戻してグローバル化以前に戻ることは不可能です.しかし,世界にはグローバル化の流れに反対している人がいます.その人たちは何を目指してデモを行っているのでしょうか…?グローバル化を止めると何が良くなるのでしょうか…?

 次に経済学が考える「良い変化」の1つの指標としてパレート改善という考え方を提示しました.一言で言えば,「他の人を不幸せにすることなく誰かが幸せになること」がパレート改善です.例えば皆さんが授業中に寝ると皆さんは幸せかもしれませんが,僕は悲しいのでパレート改善にはなりません.しかし僕に気づかれずに寝ることはパレート改善かもしれません.

 さて,ようやく本題の「絶対優位」と「比較優位」について説明します.
 講義ではまず両国にそれぞれ絶対優位となる商品があるケースと,ある国にだけ絶対優位があり,もう一方の国には比較優位しかないケースの2つを説明しました.
 それぞれが絶対優位を持つ場合は(予想通り?),貿易により両国とも幸せになれました.比較優位しかない場合は「貿易する意味があるのだろうか?」と思った人もいるかもしれませんが,(予想に反して)両国とも幸せになれました.つまり貿易は一国が勝ち,相手国は負けるようなゼロサムゲームではなく,両国とも幸せになる可能性を持つプラスサムゲームなのです.

 後半は,ではなぜ貿易(やグローバル化)に反対する人がいるのか考えてみました.理論上は比較優位のある商品は生産量を増やし,比較優位のない(比較劣位にある)商品の生産は減少することがわかりましたが,生産の減少は現実社会で言えば企業の倒産や,従業員の解雇にあたるはずです.
 そのため,歴史的には多くの国が程度の差こそあれ,関税や数量制限と言った保護貿易を採ってきました.ただし,関税や数量制限により貿易を抑制する動きは徐々に力を弱めつつあります.
 最後に自由な貿易を促進する協定を紹介しました.FTA(日本政府はEPAという言葉の方が好きなようですが)はニュースでもよく聞きますね.

【アンケート結果の報告】
 授業の評価はこちらが予想した通りなので特に言うことはありません.講義で取りあげて欲しいテーマですが,回答があったのは次の3つです.
・成長と景気
・経済史
・少子化
 このうち成長と景気,少子化は昨年以前も講義したことがあるので問題なくやれると思います.しかし経済史は恥ずかしながら,経済学の中で僕がもっとも苦手とする分野ですので,すぐにはできません….講義の最後辺り(年明けぐらい)までに準備しておこうと思います.

 その他の自由記述として「出席を毎回採って欲しい」というのもありましたが,僕はあんまり気乗りがしません.なぜなら現在でも出席することが目的となっている人が少なくないからです.「じゃあ真面目に出席してるのがバカらしいじゃないか!」と思うかも知れませんが,短期的には,欠席してる人はまず間違いなく単位を取れないから出席する意味はあると思います.他の講義は知りませんが,僕はテストの結果が悪ければちゃんと単位を落としますので.さらに長期的な視点で言えば,経済学の知識を得ることはあなたにとって有益だと思います.

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