2007年5月17日木曜日

開発経済学 第6回

 今日まではいわゆる開発経済学の入門ということで,教科書にかなり近い形でやってきました.これで一区切り,ということにして来週からは少し趣味性が高いかもしれませんが,開発経済学の中でも僕の関心が特に高いものを中心にやります.

【授業の内容】
 今日は農業についてやりました.副題として「緑の革命は何をもたらしたか?」と銘打ちました.先進国に比べ途上国では農村人口が多く,貧困層も農村部に多いため,開発経済学を学ぶには農業を無視することはできません.しかし,穀物輸出高で見た農業大国はアメリカ,フランス,オーストラリアと先進国が上位を占めています.この理由は単に国土の広さや,気候や地形などの環境だけによるものでしょうか?
 授業では,まず農業という産業の特徴を挙げました.農業とは,生産資源である土地が有限であり,気象リスクに晒され,季節性のある産業です.さらに農業を貿易の視点から「プレビッシュ=シンガー命題」を紹介しました.テキストの付録であるデータからはプレビッシュ=シンガー命題は成り立っているように見えました.
 次に,農業の生産関数ですが,農業は土地と労働力を投入することにより生産量が決まる産業であると仮定しました.土地は有限であり,一定であるとすると,労働の限界生産力は逓減すると考えられそうです.この労働の限界生産力逓減という仮定によれば,一国の人口が増加すると,いつかは1人あたり農業生産が生存可能な水準を下回ることになってしまう,マルサスの罠を避けられそうにありません.かつて,農業生産は算術級数的に増えるが,人口は幾何級数的に増えるために食糧危機が必ず起こる,と言われていました.
 しかし,1960年代以降,高収量品種,灌漑,肥料の3つによる緑の革命が起こり,食料生産量は急増し,マルサスの罠を見事に回避しました.しかし,この後はどうなんでしょう?国連の推計によれば*,2050年には世界の人口は90億人を超えるそうですが,そのペースで食料生産量も増加する,なんてことは可能なのでしょうか?
*出典:UN, World Population Prospects: The 2004 Revision, Volume I

【課題】
 課題,というほどでもないですが,近いうちに金融についてやります.なかでもマイクロ・ファイナンスと呼ばれるものをやりますので,グラミン銀行なるものについて調べておいて下さい.革新的なシステムを持つ銀行です.

【レポート】
 第1回のレポートは来週の講義までに提出です.提出期限厳守ですよ!

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